10人に1人が半年で辞める時代に、「スタバ」「マック」の姿勢から学ぶべきこと:店舗の人材教育(3/4 ページ)
日本では、パート・アルバイトの10人に1人が半年で辞める。定着率を上げるとともに、顧客に高い価値を提供するにはどうすべきか。筆者は「スタバ」「マック」の姿勢から学ぶべきだと主張する。
店舗を一時的に閉鎖した米スターバックス
スターバックスの創業者であるハワード・シュルツ氏は、2008年にCEOに復帰した際、店舗オペレーションの不備による商品の品質低下を深刻に捉えました。そこで、米国7100店舗全てを一時的に閉鎖。顧客に「最高の体験」を提供し、信頼を勝ち得るための研修に徹底的に時間を費やしたそうです。
その時、ハワード・シュルツ氏は社員に次のように語りかけました。
「会社とか、ブランドとかではありません。皆さん自身が大切なのです。お客さまに出すのにそれで十分かどうかを決めるのは皆さんです。私は皆さんの力になります。そして、何より皆さんを信用し、信頼しています」(出所:「ハワード・シュルツ「スターバックスの存在意義」〜名経営者の人材育成」)
大手企業に在籍するスタッフは数万人、企業によっては数十万人にも及びます。
そのスタッフ一人一人の意識が変わり、業務が改善され、顧客の変化への対応に目を向けるようになったときのインパクトは計り知れないものがあります。
店舗スタッフを流れ作業の中に埋没させず、一人一人の成長と前向きな顧客への姿勢を育てる――これは大変難易度が高いことではありますが、諦めてはいけないことでもあります。
スターバックスの店舗人材開発の特徴には以下のようなポイントがあると感じます。
- マネジメントはティーチング(教え込む)ではなくコーチング(サポートする)
- 金額の多寡ではなく正当な評価と成長を重視し、店舗や企業に対する信頼と愛着心を醸成
- アルバイトが意見を言いやすい風土・文化を重視し、マーケティングのヒントを見逃さない
スターバックスやマクドナルドにおいても、進学・就職というタイミングで当然離職するケースは避けられないことでしょう。雇用環境に不満を持って辞める人もいるかもしれません。しかし大切なのは、今できているか否かではなく、店舗において人材の価値と成長を重視し、それらを推進する策を講じ続けているか、ということです。
スターバックスとマクドナルドはこれを愚直に続けている企業なのではないでしょうか。
話は少し変わりますが、私がかつてアリババの方とお話をした際に、ハッと気付かされたことがあります。それは、私が日本のキャッシュレス推進をタイトルにした講演テキストを作成していた時のことです。
同じセミナーで講演するアリババの方から事前の打ち合わせでこう質問されました。「なぜ佐久間さんはキャッシュレスをセミナーのタイトルにするのですか? キャッシュレスは手段であり目的ではないですよね? レジで接客がなくなり、時間が短縮されることはメリットのように見えがちですが、実はメリットを阻害することも忘れてはいけないのではないですか。なぜなら、日本のお店の方々の接客は世界と比較しても大変素晴らしい品質であり、海外から日本に来た人にとってそれは『体験という価値』に相当するほど素敵なものなのです。だからキャッシュレスありきではなく、何が顧客にとっての価値なのか、を主軸に話された方がいいと思います」――こう言われたことが強く記憶に残っています。
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