Slack越えの最速成長、グローバル人材市場を変革するSaaS企業ディールとは(6/6 ページ)
海外進出を目指す企業や、国外の高度人材を必要とする企業にとって、海外での人材雇用はこれまで大きな障壁となっていた。こうした手間のかかる一連の労務管理を、1つのプラットフォーム上で完結させるスタートアップが現れた。グローバル人材の労務管理SaaSを提供する米国発のディール(Deel)だ。
ディールはグローバル人材が働くための「インフラ」となるか
ディールは海外人材を雇用したい企業側だけではなく、ワーカー側からも強い引き合いがある。
「ディールを利用して、海外企業で働き始めたことで収入が増加するなど、ワーカーの満足度の高さが伺えている。また、ユーザー以外の業務委託で働くフリーランスからも、自社に提案、導入してほしいという問い合わせが来ている」と中島氏が話すように、ワーカー側がディールの導入企業を志向する例は今後増えていくだろう。
また同社は労務管理からフィンテックへとサービス領域を広げ、さらなるワーカーエクスペリエンスを提供している点に注目したい。
ディールを通じて蓄積したワーカーの給与所得データを活用し、給与の前借りや審査不要でのデビットカード発行を実現している。途上国などでは、銀行口座が無いために働き口がない人材が実は多く、2017年時点では世界で成人約17億人が銀行口座を保有していないとされる。
だがそうした層にも近年はデジタルウォレットが普及しつつあり、そこにディールを届けることで、国境を越えた就業機会の裾野が広がり始めている。
同社はユーザー数が増えれば、企業とスキルドワーカーをマッチングする採用プラットフォームとしての機能も果たすはずだ。
グローバル人材のインフラとなるべくディールの拡大は続いていく。
SaaS企業のデータや分析を提供する「企業データが使えるノート」では、本記事で取り上げたDeel社のより詳細な分析をスタートアップ、SaaSビジネス関係者に向けて解説を行っている。(有料コンテンツとなります)
「史上最速成長SaaS「Deel」成長・バリュエーションの本質に迫る」
記事中のデータについて
本記事を執筆するアナリストが運営する「企業データが使えるノート」では、記事中のARR内のデータなどSaaS企業に関するKPIデータや財務、バリュエーションデータ等を独自の分析を交えnote内で提供しています。
企業データが使えるノート
「アナリストにSaaS企業分析・データ作成をアウトソースできる」をコンセプトに、記事中のARRやARPUといったSaaS KPIデータのダウンロードができるなどの独自コンテンツを配信。本記事を執筆するアナリストが運営する「企業データが使えるノート」では、記事中のARR内のデータなどSaaS企業に関するKPIデータや財務、バリュエーションデータ等を独自の分析を交えnote内で提供しています。法人利用版はこちら。
最新情報はTwitterで発信中 企業データが使えるノート @CraftData2
関連記事
- 【バーティカルSaaS】 調剤薬局のDX化を進めるカケハシ 成長スピード1年で3倍の3つの要因
調剤薬局のDX化を猛烈に推し進めるスタートアップがある。薬歴システム「Musubi」を提供するバーティカルSaaS企業、カケハシだ。導入した薬局から熱烈な支持を受け「1年で3倍の売上成長」というスピードで躍進を遂げるカケハシの戦略はどのようなものだろうか。 - 三菱商事発のMCデータプラス、知られざる“ユニコーン級"バーティカルSaaS企業とは
急成長を遂げるSaaS領域において、日々多くのニュースを目にするようになった。freee、Sansanといった上場企業の台頭だけでなく、SmartHRをはじめとする未上場フェーズの企業においても大型資金調達が報じられるなど新興企業の台頭が著しい。その中で異質な"商社発"のバーティカルSaaS企業が存在する。建設現場の労務安全書類作成・管理クラウドサービス「グリーンサイト」を提供するMCデータプラスだ。 - 【解説】バーティカルSaaS 国内でも盛り上がりの兆し
最近、注目を集めている“バーティカルSaaS"という言葉を聞いたことがあるだろうか。業界を問わず利用されるクラウド型のシステムは、部署や部門の課題を水平的にカバーすることから“ホリゾンタルSaaS"と呼ばれている。一方「建設」や「不動産」など、特定の業界に根付いた課題を解決するシステムは、垂直を意味する“バーティカルSaaS"と呼ばれ、徐々に認知が広まってきている。 - 【決算発表】コロナ禍で成長率鈍化も、「名刺の次」で見据えるSansanの成長ストーリー
クラウド名刺管理サービスを提供するSansanは7月14日、2021年5月期通期の決算を発表した。新型コロナウイルスの影響を受けながらも粘り強く成長を続けた名刺交換サービス「Sansan」の実績と、クラウド請求書受領サービス「Bill One」の順調な立ち上がりが見られた。 - SaaS企業の時価総額はなぜ高いのか?
この数年、SaaS企業は新興企業向け株式市場マザーズのIPOにおいて大きな存在感を見せています。新興市場のけん引役ともいえるほど躍進をしたSaaS企業ですが、果たしてこの勢いは、21年以降も続いていくのでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.