KADOKAWAが宇宙産業に出資した理由 ホリエモンが描く「ニュースペース2.0」の世界とは:ホリエモン×夏野剛(4)(2/4 ページ)
ドワンゴは、大型展示会「ニコニコ超会議」(超会議)を4月29日(金祝)と30日(土)に幕張メッセでリアル開催する。
上場すると経営者はハングリーじゃなくなる
堀江: これだけでもね、ITベンチャーもみんなすごい出てきたんだけど、日本のITベンチャーの面白いところは、あの米国のITベンチャーの人たちって、みんな宇宙に行くのに、日本は誰も行っていないっていう。
夏野: それは金額の問題。せいぜい2兆円ぐらいまでの企業にしかならないわけですよ。なぜそうかっていうと、あまりに早く上場させちゃうから。だから、いま2兆円くらいまでいっているIT企業って、1990年ぐらいにできたベンチャーなんですよね。楽天とかヤフーとかさ。そのあとは兆の単位にいくベンチャーって、2005年以降はないんじゃないですかね。
堀江: ないですね。
夏野: ないのは上場が早すぎるからなんですよ。上場すると経営者がお金を持っちゃうから、その時点でハングリーじゃなくなりますよね。
堀江: そうですね。いい暮らしして楽ですものね。リスクとらなくなりますよね。
夏野: あと、上場してから資金を調達しようとした時に、入れ方はつらくなりますよね。大きな商売ができなくなる。あと、頑張れるような人が投資をしない。
堀江: そうなんですよ。なぜですかね。
夏野: 騙(だま)されるのを非常に心配するんです。まあISTにお金を出している個人投資家なんかはそういうのを心配しない人かもしれないですが。一般的にはすごい心配します。自分が騙されているんじゃないかとか。つまり自信がないんでしょうね。
堀江: あと一つは、技術の見極めができないのかもしれない。
夏野: 経営者は技術の見極めが全然できないですね。
堀江: 技術の見極めと、長期トレンドの話で、例えばスターリンクの話をしても、誰も今までピンとこなかったんだけど、スターリンクが実際にウクライナの戦争で使われるようになったのは大きいですよ。
夏野: でもさ、それはやっぱり技術の見極めと、ビジョンを同時に語る人を信用すればいいだけですからね。自分で分からなくてもいいんですよ。
堀江: そうなんですけど、信用しないんですよね。
夏野: 騙されちゃうから。そういう悲しい現実があるんですけど、まあなんとか変えていかないといけないし、日本の最後のチャンスなんですよね。これ30年までしか、もうチャンスはない。30年までになせないことは、このあと日本はなせることはないです。人口減少が本当に厳しいですから。
堀江: ほんとそうですね。
夏野: ただ、お金があるから、このお金をどうするんだっていう話だけです。
堀江: それでロケットを次のニコニコ超会議に持っていくことになりました。超会議で、実物が初めて海を渡ります。北海道から出たことはなかったんですけど、会場に行けばロケットにまたがって写真が撮れるようにしています。「ZERO」っていう、いま開発中のロケットに関しては、モックアップのでっかい風船を置きますので、それはそれでまた見栄えがすると思います。
夏野: これすごい大事だと思うんですけど、今IP(知的財産)の世界で『宇宙兄弟』をはじめとして、日本から出てきている宇宙モノやSFモノの作品ってものすごく多いんですよ。でも、その人たちはなんでSFに興味を持ったのかっていったら、やっぱり宇宙開発が進んでいた時代に幼少期を過ごしていたからなんですね。
堀江: 僕の中では、『宇宙戦艦ヤマト』とか『機動戦士ガンダム』とか、『2001年宇宙の旅』とか、そういう作品を見て育ちました。僕が生まれた時にはアポロは月に行っていたし、スペースシャトルが出てきて未来はここだと思っていたら、あれは壮大な茶番だったってことはあとで分かるんですけど、みんなが普通に宇宙に行く世界が本当にやってきたなとは一瞬思っていました。
夏野: そういうリアルなことが進むと、さっきのコモディティ化したときの発想っていう話になるんですけど、やっぱりイマジネーションが膨らむんですね。だからこういうリアルな部品とか、リアルなロケットとか、そういったものに触れたり見たりすることによって、またイマジネーションがものすごく膨らみますよね。IPという分野に関しては日本はまだまだいいところがいっぱいあって、人口に対して生まれるIPの種類は、一人あたりでみると圧倒的に多いんですよ。日本って。
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