「iモードがなければスマホは誕生しなかった」――KADOKAWA夏野剛社長が語る「日本の経営者にいま必要なもの」とは?:ニコニコ超会議を前に(3/5 ページ)
「ニコニコ超会議」を主催するドワンゴを率いるのは、NTTドコモが運営していたサービス「iモード」の生みの親とされる夏野剛社長だ。国内屈指のIP企業が、宇宙ベンチャー起業に出資した理由を聞いた。
IP創出企業としての最大のミッション
――IP企業として、ISTの取り組みを応援したいということなんですね。
今まさにこういうホリエモンがやっているようなこと、宇宙ロケットを日本の民間で打ち上げるなんていう、今まで誰もやったことがないことというのは、多くの人たちに刺激を与えます。これは宇宙開発に携わる人だけではなく、クリエイターにとっても同様です。
ホリエモンたちの取り組みによって、新たに「宇宙」をテーマにした作品が間違いなく出てきますし、現に「宇宙」モノの作品は近年増えてきているんです。ですから、このクリエイティブの源泉となるこうした取り組みをKADOKAWAとしてきちんと応援することが、IP創出企業としての最大のミッションだと思ってやりました。
――とすると、具体的な協業のビジョンなどはどういう形を考えているのでしょうか。
いや、協業は別にしてもしなくてもいいんです。ISTの取り組みが今後もっと成功していけば、そのことがより日本の若者たちを中心に、多くの人を刺激してくれます。そうすれば、IPにも還元してくれることでしょう。だからこれでいいんです。それだけで十分に協業が成り立っています。
あとは、その刺激から何か書きたいとか、何か表現したいとかいう人、あるいは何か新しいものにチャレンジしたいっていう人が出てきたら、それをまたすくい上げてIPに仕立て上げていくのが僕らのミッションだと思っています。
――ニコニコ超会議にISTが出展します。どのようにアピールしていきたいですか。
今回ISTが初めて出展してくれるのですが、それだけでも十分なアピール能力があります。さらに超会議には毎年、自衛隊が会場に戦車をはじめリアルな軍事技術を展示してくださっています。ここに宇宙技術が一緒になるというのはすっごい面白くなります。やはりリアルな展示物は迫力があって人気がありますから。すごく期待しています。
観測ロケット「ねじのロケット(MOMO7号機)」は、2021年7月3日に宇宙空間到達を果たした機体と同型を、超会議で初展示するという。この機体は本来、20年7月に打上げ予定でしたが、エンジン点火器の不具合によって打上げ直前に安全装置が作動して自動停止した。その後、全面改良した新型7号機を21年7月に打ち上げたため、展示用としてIST本社で保管しているもの(リリースより)
2018年6月に打ち上げた観測ロケット「MOMO2号機」は、離昇後すぐに推力を失い、炎上した。この経験を踏まえて改良を重ねた結果、19年5月に打ち上げた「宇宙品質にシフト MOMO3号機」が国内民間単独として初めて、宇宙空間に到達した。超会議では、倉庫で保管していた実際の機体を公開する(リリースより)【編集履歴:2022年6月1日午後12時3分 当初、一部を「長会議」としていましたが、正しくは「超会議」でした。おわびして訂正いたします】
――このウクライナ戦争の国際情勢下で、こういうことをやることはすごく意味がありますね。
このロシアのウクライナ侵攻については、本当に何ができるんだろうということを日々思っています。もちろん募金とかそういうものもいいんですけど、やっぱり出版社として、あるいはIP創出企業として何ができるのかということですね。このあたりは本当にいまいろいろと考えていて、ちょっとした企画も考えています。今後オープンにしていけたらと考えています。
――N高の文化祭も超会議の中でやりますね。これも、日本の若者への刺激につながるのではないでしょうか。
ニコニコ超会議の中で、「磁石祭」という名称で、角川ドワンゴ学園が運営するN高とN中等部、S高の文化祭をまとめて、3年ぶりにリアル開催する運びになります。これはN高から始まった取り組みですが、N高はそれまで画一的な教育しかなくて、その中でなんか嫌だなと思っている人に対しての一つのソリューションサービスを提供しているわけです。これも今の日本の若い世代が、欲しいと思っているのにないものをきちんと提供することがすごく大事だと思っています。
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