「iモードがなければスマホは誕生しなかった」――KADOKAWA夏野剛社長が語る「日本の経営者にいま必要なもの」とは?:ニコニコ超会議を前に(4/5 ページ)
「ニコニコ超会議」を主催するドワンゴを率いるのは、NTTドコモが運営していたサービス「iモード」の生みの親とされる夏野剛社長だ。国内屈指のIP企業が、宇宙ベンチャー起業に出資した理由を聞いた。
iモードは自分が欲しいものを作った
――若者に対するソリューションサービスを提供していくという点では、今回のISTへの出資もニコニコ超会議もN高の取り組みも全てつながっているわけですね。iモードの時もそれは変わっていないのでしょうか。
iモードはまさに自分が欲しいものを作った。当時の技術だからあそこまでしかいかなかった。技術がないから、1999年にはスマホを出せなかったわけです。当時PDAっていう小型の端末があったんですけど、このPDAとPHSをくっつけるとスマホに近いものができたと思うんですが、当時はこの2つをくっつけてもそんな小さくならなかったんですよ。実際に出してみたけど、全然売れなかった。だから2008年まで待たないとスマホはやっぱり作れなかった。部品が揃(そろ)わなかったんですね。
――やはり日本のガラケーは10年早かったわけですか。
でも、10年早く日本人だけは携帯からインターネットに接続できていたわけです。「そのあとスマホにやられて〜」という人もいますが、iモードがなければ、スマホは誕生しなかったと言っても過言ではないんです。現に、僕はGoogleの元CEOのエリック・シュミットに「iモードがなかったらAndroidのスマホを自分たちで作ろうと思わなかった」とはっきり言われたことがあります。
もっと言うと、GoogleがAndroid OSを開発する前に相談も受けました。その際に、「こんなに携帯からGoogle検索がされるとは誰も思わなかった」とも言っていたんですね。
――なるほど! にもかかわらず、当時は日本以外、海外の携帯端末のシェアを持っていた例えばノキアやモトローラは、iモードの動きにそこまで追随していませんでした。
「『そんなの日本だけの現象だ』と言って乗ってくれない」と、エリック・シュミットもボヤいていました。その原因は何かというと、彼らの分析ではソフトの開発が高すぎるというのが結論でした。だから、自分たちでソフトとOSを全部作って、それを無償で提供したら世界中が日本みたいな状況になるんじゃないかという話だったんですね。
――まさに、iモードは今のスマートフォンのビジネスモデルだったんですね。
そうなんですよ。Androidだけでなく、同じことをiPhoneの開発チームの人からも良く言われます。iPhoneやiOSを開発する際に、徹底的にiモードを研究したと。だから、「あなたがミスター夏野か」とよくいわれます。だから、日本はガラケーのせいでスマホに遅れたわけじゃない。メーカーが自由に作れるのに作らなかったのが原因なんです。
――堀江さんは、民間ロケット開発の世界でも、「オールドスペース」という国主導のクローズドな技術からオープンになり、民間に広がったことで一気に技術革新が広がると訴えています。その根拠に、UNIXという有償のOSからLinuxという無償のOSが広まったことで、一気にインターネットが民主化したコンピュータの歴史を以前も教えてもらいました。
そういう意味では、Androidと同じような広まりが起こる可能性があるから、ホリエモンの会社をすごく応援しています。でも、同じことはオールドスペースの会社がうまく転換することでも、対応ができるはずなんです。やはりそこは、産業構造の問題ではなく、経営者の問題だと思います。自動車産業におけるEV(電気自動車)も、同じことが起きていると思いますね。
関連記事
- KADOKAWAが宇宙産業に出資した理由 ホリエモンが描く「ニュースペース2.0」の世界とは
ドワンゴは、大型展示会「ニコニコ超会議」(超会議)を4月29日(金祝)と30日(土)に幕張メッセでリアル開催する。 - iモード生みの親・夏野剛が斬る「オールドスペースからは日本の宇宙産業は何も生まれない」
KADOKAWAは、ホリエモンこと堀江貴文氏が取締役を務める宇宙開発ベンチャー、インターステラテクノロジズに出資する。なぜ、出版をはじめとした総合エンターテインメント企業が宇宙開発に出資したのか。4月には都内のIST東京支社で、堀江氏と夏野氏が対談。日本の宇宙開発ISTをはじめとする日本の宇宙開発ベンチャーに賭ける思いを明かした。 - ホリエモンが明かす「民間ロケットとLinuxの共通点」 宇宙開発で今、切実に足りていない人材とは
ホリエモンこと堀江貴文氏に単独インタビューを実施。なぜ今、ロケットの民間開発が必要なのか、そして何が一番の課題なのか。その問題点を聞いた。 - ホリエモンが北海道で仕掛ける「宇宙ビジネス」の展望――くだらない用途に使われるようになれば“市場”は爆発する
ホリエモンこと堀江貴文氏が出資する北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズが5月2日に予定していた小型ロケット「MOMO5号機」の打ち上げを延期した。延期は関係者にとっては苦渋の決断だったものの、北海道は引き続き宇宙ビジネスを進めていく上で優位性を持っており、期待は大きい。そのことを示したのが、2019年10月に札幌市で開かれた「北海道宇宙ビジネスサミット」だ。登壇したのは、同社の稲川貴大社長と堀江貴文取締役、北海道大学発ベンチャーのポーラスター・スペースの三村昌裕社長、さくらインターネットの田中邦裕社長、北海道大学公共政策大学院の鈴木一人教授。 - 宇宙ベンチャーISTが直面した組織における「50人の壁」 ロケット打ち上げ2回連続成功を支えたマネジメントとは?
ロケットの開発から打ち上げまでを一貫して自社で担い、大樹町のまちづくりにも関わるインターステラテクノロジズは22年も大きく成長しようとしている。稲川社長にISTのロケット打ち上げ成功の背後にあった「50人の壁」と、それをどんなマネジメントによって乗り越えているか、そして今後の展望を聞いた。 - ホリエモンが斬る「ビットコインで大損した人たちを笑えない事情」
「日本の義務教育で行われている教育の大半は、意味がない」と語るホリエモン。「ビットコインで大損した例は、笑い話ではない」と話す。 - ホリエモンが「次の基幹産業は宇宙ビジネスだ」と断言する理由
北海道大樹町で観測ロケットと超小型衛星打ち上げロケットを独自開発しているインターステラテクノロジズ。同社ファウンダーのホリエモンこと堀江貴文が宇宙ビジネスが自動車産業などに代わって日本の基幹産業になる可能性を語る。日本が持つ技術的・地理的なポテンシャルの高さがあった。 - 堀江貴文に聞く インターステラテクノロジズと民間宇宙ビジネスの現在地
日本でいち早く民間による宇宙ビジネスに取り組んできたのが、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏だ。堀江氏が創業したインターステラテクノロジズは観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」」で、国内の民間ロケットで初めて宇宙空間に到達した。ITmedia ビジネスオンラインは堀江氏に単独インタビューを実施。「世界一低価格で、便利なロケット」の実現を目指すISTの現状や、ゼロからのロケット開発を可能にした背景について聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.