知床遊覧船のような「観光ブラック企業」は、どのような特徴があるのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没した事故で、運営会社「知床遊覧船」のブラックぶりが次々と明らかになっている。「観光ブラック企業」にどのような特徴があるのか。知床遊覧船の公式WebサイトやSNSを見ると、そのヒントが詰まっていて……。
「退場」させるべきだった
厳しい言い方をさせてもらうが、知床遊覧船のような会社は潰れていたほうが社会のためだった。「ブラック企業で右往左往」と疲弊していた豊田船長などの従業員も解放されて、他の会社へ転職できた。もうけがなくなって困るのは、桂田社長ただ1人だけだったのである。
そして、何よりもこんな会社の船に、だまされるような形で乗せられて、冷たい海に放り出されてしまった24人の観光客の無念を思えば、知床遊覧船と桂田社長には、国の行政指導によって早く知床観光から「退場」してもらうべきだったのではないか。
本来は国が責任をもって厳しく取り締まるべき観光ブラック企業を、「経営基盤が弱いから」という理由で「延命」させたことで、結果として多くの尊い命を奪うことになってしまった。
「中小零細企業を倒産させない」という過度な保護政策よって、結果的に低賃金重労働を常態化させて、多くの人々を経済死させている現在の日本の状況と妙に重なる。今回の事故も、国土交通省をはじめとした政府の罪が重いと感じるのは、筆者だけだろうか。
最後になりましたが、亡くなられた方たちのご冥福を心からお祈りします。合掌。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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