知床遊覧船のような「観光ブラック企業」は、どのような特徴があるのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没した事故で、運営会社「知床遊覧船」のブラックぶりが次々と明らかになっている。「観光ブラック企業」にどのような特徴があるのか。知床遊覧船の公式WebサイトやSNSを見ると、そのヒントが詰まっていて……。
「顧客目線」が欠如
誤解なきように言っておくが、「公式WebサイトやSNSを更新していない観光業者はすべてブラック企業だ」などと主張したいワケではない。民宿やホテルなどはシンプルに人手が不足しているので、WebサイトやSNSの更新にまで手が回らないこともあるだろう。SNSが開店休業状態でも、しっかりとしたサービスを提供している観光業者も少なくないはずだ。
ただ、先ほども述べたように観光業、特に大自然の中で人命に関わるようなアクティビティを提供するような会社の場合、SNSでの情報発信は、観光地の満足度向上だけではなく、そのツアーの安全を伝えるためには必要不可欠なものとなっている。
それが欠如しているということは、厳しいことを言わせていただくと、「顧客目線」が欠如していることでもあるのだ。今回のような杜撰(ずさん)な安全管理が招く事故というのは往々にして、利用者側の視点が欠如している会社が起こしている事実がある。
「WebサイトやSNSの更新」というのは、その会社がどれだけ「外の世界」に向き合っているのかを示している部分もある。観光業という外の世界の人々とのコミュニケーションが必要不可欠な業種で、それをやっていないのは、組織として何かしらの問題がある可能性もあるのだ。
もちろん、それ以前に観光客側が安心してツアーを利用できる環境整備が必要であることは言うまでもない。本来は、国や自治体が観光ブラック企業をしっかりと行政指導して、悪質な場合は営業停止処分などを下すのだ。
知床遊覧船はこの1年で事故を多発しており、行政指導で社名も公表されていれば、このような悲劇を避けれた可能性もある。しかし、事故は表沙汰にならなかった。
弁護士などの専門家によれば、これは小型船クルージングなどをやっている観光業者は中小零細が多いので、厳しい処分を下すと経営がすぐに傾いてしまうからだという。これは要するに、「小さい会社の悪事はお目こぼしされる」ということだ。
日本の会社は99.7%が中小企業ということもあって、「中小零細企業を倒産させなければ地域経済は発展する」という思想のもと、過度な中小企業保護政策が行われていた。
もちろん、成長している中小企業を応援することは大切だ。が、日本は「小さい会社」という条件を満たしているだけで、手厚い保護を受けられる。その結果、安全よりコストカットを重視するような観光ブラック企業まで守られてしまっているのだ。
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