知床遊覧船のような「観光ブラック企業」は、どのような特徴があるのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没した事故で、運営会社「知床遊覧船」のブラックぶりが次々と明らかになっている。「観光ブラック企業」にどのような特徴があるのか。知床遊覧船の公式WebサイトやSNSを見ると、そのヒントが詰まっていて……。
「急速にブラック化」の可能性
そんな際立った「やる気のなさ」は翌18年に、さらに拍車がかかり、地震の影響を伝える2件のみとなって、19年はついにゼロになる。Webサイト上のブログ更新が途絶えるのも、この時期だ。
だが、そんな開店休業のFacebookが20年8月に突然、復活する。知床小型観光船協議会のクラウドファンディングプロジェクトで600万円近くが集まったという御礼が掲載されるのだ。このときのプレスリリースをみると、協議会の「会長」は桂田社長になっており、このような主旨が説明されている。
『本年は集客不振により未だに数便しか運航できないという壊滅的な状況であり、資金繰りや雇用の維持など日増しに危機意識が高まるばかりです。そこで、知床小型観光船の未来のため、この現状を打破するべく、クラウドファンディングに挑戦することを決意いたしました』(有限会社ホワイトリリー旭川 プレスリリース 20年7月21日)
ただ、奇妙なのはこのクラウドファンディングを境に再び、更新がプツリと途絶えてしまうことだ。クラウドファンディングはネットやSNSを使って呼びかけるものなので、その前後は情報発信が活発に行われがちだ。実際、同業者は20年7月以降、いろいろな写真をアップするなどしている。
しかし、知床遊覧船のFacebookは沈黙する。同社の中ではクラウドファンディングどころではなく、リストラの嵐が吹き荒れていたからだ。同社の元船長が地元メディアの取材にこう述べている。
「統括と営業部長は2020年の12月に首になった。自分を含めて季節雇用3人は契約を更新しないと通告された」(北海道ニュースUHB 4月26日)
そして21年に入ると、ベテラン船員など合わせて5人が一斉に会社を離れることになって、甲板員だった豊田さんが「格上げ」となり船長になったという流れである。
つまり、同業者が積極的にSNSを活用しているのに、知床遊覧船はほとんど更新することなく、20年ごろに休眠状態になってしまったのは、この会社が17年から急速にブラック化が進行して、「それどころじゃなかった」可能性があるのだ。
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