知床遊覧船のような「観光ブラック企業」は、どのような特徴があるのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没した事故で、運営会社「知床遊覧船」のブラックぶりが次々と明らかになっている。「観光ブラック企業」にどのような特徴があるのか。知床遊覧船の公式WebサイトやSNSを見ると、そのヒントが詰まっていて……。
情報を更新しない
ご存じのように、観光業にとってWebサイトやSNSでの情報発信は非常に大きな意味を持っている。今の観光客はネットで情報を検索するからだ。
昔ながらにガイドブックやパンフレットを見て、宿泊先やアクティビティを申し込む人もいるかもしれないが、ホテルやツアー会社のWebサイトやSNSをチェックして、「ちゃんとしたところみたいだな」と安心して予約をする人が多いだろう。
そこに加えて、今回の観光船のように大自然を相手にするようなツアー業者ともなれば、SNSを使ってのこまめな情報発信は別の意味もある。同業者である「知床クルーザー観光船ドルフィン」の以下の投稿が分かりやすい。
『昨日から不安定な海上状況が続いております。明日までは欠航で確定しましたが、12日〜13日あたりまではイマイチな予報ですので、クルージング以外の予定も計画されておいた方が良さそうです』(Instagram 21年8月9日)
遠方からクルージングを楽しみにやってくる観光客のことを考えれば、最新の海の状況や運航情報などを事前に伝えておくことで、無用なクレームを避けることもできるし、釧路観光全体の満足度にもつながるのだ。
そんな“観光業の生命線”といっても過言ではないWebサイトやSNSを、知床遊覧船は2年近く放置している。ということは、2年ほど前からこの会社の内部で何かしらの大きな問題が発生して、従業員が定期的に情報発信をする余裕もないほど疲弊していた、と考えることもできるのだ。
まさしく、豊田船長が言っていたように、従業員たちが「ブラック企業で右往左往」していて、とても更新作業などできる状態ではなかった可能性があるのだ。実際、知床遊覧船の内部のゴタゴタを振り返っていくと、同社の“やる気のない情報発信”と見事にリンクしている。
報道によれば、同社がおかしくなったのは現在の桂田社長が経営権を買い取った17年ごろからだということだが、このFacebookがスタートしたのも17年3月。ただ、この5カ月間、なんの情報もアップせずに、更新するのはプロフィール写真だけというグダグダな感じだった。
同年8月になると、桂田社長が経営する「国民宿舎桂田」の情報や、系列のゲストハウスの紹介など6件の投稿があるが、同業者のようにクルージングの様子を紹介したり、欠航情報などを伝えることはない。
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