日本でいまだに横行する「勤怠記録の改ざん」「サービス残業」 不正行為を生み出す支配従属型組織とは:公立小中学校教員の「6人に1人」が経験(1/3 ページ)
20〜50代で公立小中学校の教員として勤める人の6人に1人が勤務記録の改ざんを求められたことがあるという衝撃のニュースが明らかになった。なぜ、いまだにこうした不正が行われるのか。
「労働基準監督署が来ることになったので、協力をお願いできますか?」
管理職として転職した会社で、総務人事の担当者から印鑑を持ってきてほしいと呼び出され持参したところ、そう切り出されました。
どのような協力かを尋ねると、勤怠管理簿に印鑑を押してほしいとのこと。そこで差し出されたのは、管理下の部署に所属する社員たちの名前が書かれた勤怠管理簿でした。しかし中身を確認すると、ほとんど定時上がりの数字が記載されています。一目見て「改ざんだ」と理解しました。
管理下の社員の中には残業が多くなっている人もいましたが、労基署に問題視されるほどではなく、けげんに思って意図を確認しても「それは……」と口を濁すだけ。詳細を話してもらえないまま、ただ押印だけお願いしたいという“協力要請”を断ると、次に発せられたのは以下の言葉でした。
「常務からの指示です」
社内での立場を考えると強い恐怖心を覚える言葉です。また、印鑑を貸してもらえるだけでよいとのことでしたが、あらためて断りを入れて席を立ちました。「常務からの指示」は、断ると会社に反旗を翻したように受け取られかねないだけに、強いプレッシャーを感じます。同様に総務人事の担当者もまた、汚れ仕事の指示だと理解しつつもプレッシャーにさらされていたはずです。
後に分かったことですが、その会社は他部門の元社員から数百万円に及ぶ未払い残業代を請求されるトラブルを抱えていました。その後も詳しい情報は共有されなかったため、そのことが労基署による監査の直接的原因だったのかは不明ですが、理由はともあれ勤怠管理簿を捏造しようとしている時点で、不健全な組織体質であることがあらわになりました。
そんな古い不快な記憶がよみがえったきっかけは、4月27日にNHKが報じた「公立小中学の教員6人に1人 勤務時間の『過少申告』求められる」というニュースを見たことです。
ニュースで紹介されている調査によると、全国の公立小中学校の20〜50代の教員のうち17%が、この2年間に書類上の勤務時間を少なく書き換えるよう求められたことがあるとのことでした。
そのような事態に陥ってしまう背景には、業務量と勤務時間とのバランスが取れず残業過多になりがちな仕事環境があります。
関連記事
- タブー視されがちな「解雇無効時の金銭解決ルール」 働き手にとってもメリットがありそうなワケ
これまで立場の弱いとされる働き手を保護する観点から、なかなか整備が進まなかった「解雇の金銭解決」。ここに来て厚労省で整備の動きが出てきている。タブー視されがちな制度がなぜ、今? - 格差が広がる日本 週休3日の“貴族”と、休みたくても休めない“労働者”
「週休3日」に注目が集まっている。大企業が相次いでこうした先進的な制度を導入する陰で、休みたくても休めない労働者の存在が置き去りにされている。日本の働き方改革は、どこへ向かうのだろうか──。 - 上司ガチャって関係ある? 40歳からは「愛をケチらず、上司を出世させよ」
会社員にとって、上司は重要な存在だ。どんな上司と出会うかで、その後の会社人生が決まると言っても過言ではない。一方で、40歳になったら、どんな人が上司であろうと、上司との向き合い方を変える必要があると筆者は解説する。40歳以降の会社員生活で、重要なこととは──? - 「テレワーク7割」どころか、紙業務・サービス残業が横行の霞が関官僚 「与野党合意」で民間企業の模範となれるか?
政府が要請する「テレワーク7割」だが、そもそも霞が関で働く官僚が達成できていない。それどころか、民間企業未満の過酷な働き方が昨今明らかになっている。その元凶ともいえる国会対応を巡る与野党合意で、民間企業の模範へと変わっていけるのだろうか。 - 霞が関でも導入 民間企業がよく使う「若手の声を聞く作戦」に潜む欺瞞
組織が抱える課題を打破するためによく使う「若手の声を聞く作戦」。もちろん、十分に活用できればメリットがあるが、その一方で“欺瞞”もあるようで……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.