マクドナルドのテークアウト/デリバリー成功の要因はどこにあった? 絶好調で時短協力金も辞退: 妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/6 ページ)
決算書で分かる日本経済の動向ということで、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのは日本マクドナルドホールディングス、ハンバーガーチェーンのマクドナルドの国内展開をしている企業です。
マクドナルドHDの成長を支える、テークアウトとデリバリー
ではコロナ禍で店内飲食が悪影響を受ける中、どうしてマクドナルドHDがこれだけ成長を続けているのかというと、それはもちろんテークアウトやデリバリーが支えているためです。
店舗内でのテークアウトが多いのはもちろんのこと、22年3月末時点では全店2942店舗のうち、ドライブスルー対応が1511店舗、デリバリー対応が2067店舗、パーク&ゴーというモバイルオーダーをして駐車場で受け取れるサービスをしている店舗が1056店舗と、店舗外の対応店も非常に多いです。
ではどうしてテークアウトやデリバリーに力を入れると、これだけの成長ができるのでしょうか?
飲食業の売り上げを分解すると「客単価×客数」に分解でき、さらに客数を分解すると「客席数×回転率」に分けられます。
つまりテークアウトやデリバリーを増加させると、店舗の客席数という枠組みに縛られる必要がなくなるので、実質的な客席数の大幅な増加につながり、結果として売り上げの増加につながるわけです。
さらにマクドナルドHDでは、公式アプリのアクティブユーザー数が月間2300万人にもなっていて、スマホで支払いまで済ませるモバイルオーダーも浸透しています。これによって、注文をするための「レジのレーン数」という制約も取り払うことができています。
つまり、テークアウト、デリバリー、モバイルオーダーの強化によって店舗のサイズという上限を突破し続けているので、成長が続いているわけです。
ちなみにマクドナルドHDは、新店の出店だけではなく既存店舗の建て替えや改装なども積極的に進めていて、ドライブスルーレーンの拡張や厨房機器の増強、更新にも前向きです。単純に老朽化した店舗が増えているからというだけではなく、テークアウトやフードデリバリーによって増加する注文量に対する強化を進めていることが分かると思います。
また、店外飲食に力を入れる一方で、おもてなしリーダーという接客のみを行うクルーを配置した店舗を増やしたり、テーブルサービスというテーブルまで商品を届けるサービスをする店舗を増やしたりと、店内飲食では体験価値を向上させる施策を増やしているのもさすがです。
関連記事
- コメダ珈琲は、なぜコロナの悪影響をあまり受けなかったのか?
決算書で分かる日本経済の動向ということで、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。第3回目として取り上げるのはコメダホールディングスです。もちろんコメダコーヒーの運営をしている企業です。 - 吉野家は、飽和する国内市場でなぜ郊外と女性に目をつけたのか?
今回取り上げるのは吉野家ホールディングスです。牛丼チェーンの吉野家を中心に展開していて、それ以外にも大きなチェーンでははなまるうどんもこの吉野家グループの企業です。最近は本業以外の部分でも話題になることが多い吉野家ですが、今回はそんな吉野家の現状と今後について考えていきましょう。 - サイゼリヤがコロナ前をはるかに上回る利益水準になった理由
決算書で分かる日本経済の動向という事で、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのはサイゼリヤです。もちろんイタリアンのファミリーレストランであるサイゼリヤを運営している企業です。 - QBハウスがコロナ禍でも「客を離さない理由」 秘密はビジネスモデルにあり
なぜQBハウスはここまで拡大できたのでしょうか。早いから? 安いから? 確かにそうかもしれません。しかしそれだけでは拡大できないのがビジネスの世界。今回は早い安いに裏打ちされたQBハウスの強みについて紹介します。 - 会計クイズ ゲームメーカーの任天堂はどちらでしょう?
分かりにくいと思われがちな財務諸表。この記事では、会計初学者をターゲットにした貸借対照表の基礎についての解説をした上で、「会計クイズ」を出します。押さえるところを押さえれば、貸借対照表は決して難しいものではありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.