マクドナルドのテークアウト/デリバリー成功の要因はどこにあった? 絶好調で時短協力金も辞退: 妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/6 ページ)
決算書で分かる日本経済の動向ということで、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのは日本マクドナルドホールディングス、ハンバーガーチェーンのマクドナルドの国内展開をしている企業です。
値上げで2極化するFC運営企業
最後に原材料費の高騰の影響を見ていきます。
直近の22年12月期の第1四半期(1〜3月)では、原材料費の上昇の影響で利益が19億円ほど押し下げられたとしています。
マクドナルドHDは成長が続いているので、売り上げの増加で増益は保ったものの、多くの飲食店では原材料費高騰の影響で収益性が悪化していると考えられます。4月、5月の状況を考えても、まだまだ今後、原材料費高騰による収益性の悪化は続くでしょう。
そういった中で最近では値上げを発表する飲食店が増えています。マクドナルドHDでも3月14日から全メニューの約2割で値上げを発表しています。そして、今後原材料費高騰、値上げが進む中でFC中心の展開をする企業の業績は2極化すると考えています。
というのも基本的にFC運営を行う企業は、FC加盟店から売り上げに対して決まったパーセンテージでロイヤルティーを取るモデルになっているところが多いからです。
マクドナルドHDでは売り上げの3%をロイヤルティーとして、4.5%を広告宣伝費として、インフラサービスフィーとしても0.7%、合計で8.2%をFC加盟店から取ります。さらに店舗や設備が賃借の場合は、レントロイヤルティーを取るモデルになっています。
つまり値上げが進むと客単価上昇によって売り上げは増える可能性が高いわけですから、ロイヤルティーの増加で好調になる可能性が考えられます。
しかしFCの加盟店舗側はどうでしょうか? 価格決定権を持つFC運営側からすると、顧客減少による業績悪化は避けたいですし、値上げによる売上増でロイヤルティー増加は見込めますので、原材料費の高騰分を上乗せしただけの小幅な値上げが増えています。
そのためFC加盟店側からすると、売り上げは増えたとしても、その分材料費が増えるだけなので利益は増えません。そのため、ロイヤルティーが増加した分だけ利益を減らす形になります。
例えばロイヤルティーが売り上げの10%だとしましょう。売り上げ100円、原価30円、その他の費用50円だとすると、利益は20円でそこからロイヤルティーが10円引かれて10円が店舗側に残ります。
ここで原価が10円上昇して10円の値上げをすると、売り上げ110円、原価40円、その他の費用50円で利益は変わらず20円ですが、ロイヤルティーが11円になり店舗側に残る金額は9円になりFC加盟店側が悪影響を受けることになってしまいます。
FCを運営する企業にはコロナ禍でダメージを受けたところも多く、さらに前回取り上げたコメダHDと同様で補助金の好影響があったわけでもありません。早期の業績回復を目指す中で例えば条件変更をして、ロイヤルティーを減らすような対応は難しいでしょう。
多くの飲食店ではコロナで厳しい状況が続いていました。今後は補助金の好影響もなくなる中で、FC加盟店側では収益性が悪化し、コストカットなどでサービスの低下による業績悪化となる企業や、FCからの離脱増加による業績悪化となる企業が出てくるのではないかと考えています。
一方でマクドナルドHDのような成長が続いている企業では、成長によって値上げによる負担増を補うことが可能ですから、値上げによるロイヤルティー増加の好影響の恩恵を受けさらに好調となる可能性があるわけです。
このように、今後はFC中心の展開をしている企業は、好不調が分かれていくのではないかと考えています。
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