ディーゼルはオワコンなのか? 輸入車の現状とハイブリッドとの戦い: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(4/4 ページ)
電動化が注目されるほどに存在感が薄くなっていくものがあります。それがディーゼル・エンジンです。「ディーゼル・エンジンは消えてなくなる」……と思いきや、世の中は単純ではなかったようです。
フルハイブリッド vs ディーゼル
では、マツダではない、トヨタやホンダ、日産のハイブリッドとディーゼルを比べるとどうなのでしょうか。トヨタや日産、ホンダのハイブリッドは、発電用と強力な駆動用モーターを搭載するのが特徴です。
性能を比較してみれば、ゴルフのディーゼルは、リッター20キロの燃費に110kW(150馬力)のパワー、360Nmのトルクを有します。それに対して、日本のフルハイブリッドとなる、トヨタのカローラスポーツのハイブリッドは、リッター25.6キロ、システム最高出力90kW(122馬力)、エンジン142Nm・モーター163Nm。そしてホンダのインサイトは28.4キロ、モーター96kW(109馬力)/267Nmとなります。
車種 | リッターあたり燃費 | 出力 | トルク |
---|---|---|---|
ゴルフ(ディーゼル) | 20キロ | 110kW(150馬力) | 360Nm |
カローラスポーツ(ハイブリッド) | 25.6キロ | 90kW(122馬力) | 142Nm・163Nm |
インサイト(ハイブリッド) | 28.4キロ | 96kW(109馬力) | 267Nm |
つまり、燃費で見ると「フルハイブリッド」が勝り、加速力の源になるトルクでは「ディーゼル」が上。これに「マイルドハイブリッドのガソリン・エンジン」を加えると、燃費はフルハイブリッド>ディーゼル>マイルドハイブリッド、トルクはディーゼル>フルハイブリッド>マイルドハイブリッドの順となります。
逆にいうと、燃費も悪く、トルクもないのが「マイルドハイブリッド」となります。そして輸入車には「フルハイブリッド」がほとんど存在しません。そのため、「フルハイブリッド」の日本車と戦おうというのであれば、輸入車は、トルクに勝る「ディーゼル」が欠かせないということになります。
EVが売れていない日本市場では、フルハイブリッドが数多く販売されています。その中で、フルハイブリッドを持たない輸入車が勝負するには、まだまだディーゼルが欠かせないのではないでしょうか。EVが売れるようになるか、日本車のフルハイブリッドに対抗できる新技術が出てくるか。それまではディーゼルが終了することはないはずです。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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