ディーゼルはオワコンなのか? 輸入車の現状とハイブリッドとの戦い: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/4 ページ)
電動化が注目されるほどに存在感が薄くなっていくものがあります。それがディーゼル・エンジンです。「ディーゼル・エンジンは消えてなくなる」……と思いきや、世の中は単純ではなかったようです。
よく走るのに、燃費が良くて、ランニングコストが安い
EVを強く推す輸入車ブランドなのに、日本では、EVではなくディーゼルの方が売れている。その理由は何でしょうか。
その理由は、いくつか考えられます。まず確かなのは、輸入車、特に欧州は、今もなお、ディーゼル車を数多くラインアップしていること。21年度に日本で売れたベスト3(JAIA発表「外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移」)となる「BMWミニ」「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「BMW3シリーズ」の3モデルには、すべてディーゼル・エンジン車が用意されています。売れているモデルにディーゼルが用意されている、あるいはディーゼルを用意するから売れているともいえます。
そして、2つ目の理由は、ディーゼル・エンジン車の性能は、今も第一線級だということです。
ディーゼル・エンジンは、加速が非常に力強いという特長があります。ミニの1.5リッターディーゼルの最大トルクは270Nm、ゴルフの2リッターディーゼルでは360Nmもあります。過給機のないガソリン・エンジンでいえば、3リッタークラスの性能数値です。Cセグメント相当のボディに、その上のクラスのトルクがありますから、その違いは誰にでもハッキリと感じとることができます。「速い!」「よく走る」と思えるのです。
それでいてディーゼル・エンジンは燃費に優れます。輸入車にもハイブリッドが存在しますが、そのほとんどが日本車でいうマイルドハイブリッドという内容です。最新のフォルクスワーゲン・ゴルフの1リッター・エンジンのマイルドハイブリッドの燃費は18.6キロ(WLTCモード)なのに対して、2リッターのディーゼルは20.0キロ(WLTCモード)と上回ります。さらに、ディーゼルの燃料となる軽油は、ガソリンよりも安いので、ランニングコストで考えると、大きな差になります。
つまり、「よく走るのに、燃費が良くて、ランニングコストが安い」というわけです。これでは人気が出るのは当然でしょう。同じように、日本車でもマツダがディーゼル・エンジン車を発売しています。そして、マツダのハイブリッドはマイルドハイブリッド。つまり、マツダのディーゼルとマイルドハイブリッドのガソリン車という組み合わせは、欧州車と同じなのです。そのためか、マツダの販売の約3割がディーゼルです。マツダのディーゼル人気は、欧州車と同様な理由と見ていいでしょう。
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