海外は「賃上げラッシュ」なのに、なぜ“安いニッポン”は我が道を行くのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
多くの国で「賃上げラッシュ」が起きている。欧米だけでなく、マレーシアや韓国などでも賃上げの報道が続いているが、その一方で、なぜ日本は乗り遅れているのか。背景に何があるのかというと……。
これからは「少ない給料の中で」
冒頭で紹介した米ロサンゼルスのように、社員数名の小規模事業者だからということで特別待遇をするのではなく、一律に最低賃金というボトムラインを引き上げていくのだ。
物価上昇の影響は大企業だろうが、中小零細企業だろうが変わらない。ならば、それに伴う賃上げも同じようにフェアに実施すべきだ。
……ということを言ったところで、先ほども申し上げたように、日本の政治は「国政選挙」という全国の中小企業団体の世話にならないといけないビッグイベントが定期的にあるので、このような取り組みは残念ながら実現しないだろう。
ただ、それではあまりにも身もフタもない話なので、「中小企業保護が足りない」「消費増をやめればすべて解決だ!」「悪い円安から抜け出せ」など、労働者に淡い期待を抱かせるような「諸悪の根源」が叫ばれているのだ。
振り返れば、世界的な新型コロナ流行拡大も、日本は医療体制の改革という政治的な問題は棚上げされ、「気を緩めるな」「マスク、手洗いを徹底する日本人は真面目」なんていう “個人のがんばり”で乗り切った。
それは恐らく今回も変わらない。既に日本国内では「値上げに負けるな!」「こんなすごい節約術がありました!」という声ばかりがあふれている。一方で「企業は賃上げしろ!」「最低賃金を1500円に」なんて欧米のようなことを叫んでいると、「ああ、あの人は……」と冷めた目で見られてしまう。
値上げラッシュは、まだ続くという。日本人の「忍耐」と「節約」の戦いは、いよいよこれからが正念場だ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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