AIを導入する企業は53% 日本が米国に追いつく:PwCが日米両国で調査(2/2 ページ)
日本企業のAI(人工知能)活用度合いが米国に追いついた――。そんな結果が、コンサルティング業を手掛ける「PwC Japanグループ」の調査で分かった。業務にAI を導入する日本企業の割合は、2021年の43%から22年は53%と1年間で10ポイント増加。米企業のAI導入が足踏みする中、日米で差が埋まりつつある結果となった。
日本の企業が遅れを取っている点は?
一方で、日本が遅れを取っている部分も明らかになった。
1つはAI投資のROI(投資利益率)の正確な測定能力だ。米国の企業は64%が「正確に測定できている」と回答したのに対し、日本企業は21%にとどまった。「測定できていない」「わからない」の合計は米国の3%に対し、日本は37%と遅れが顕著になっている。
PwCは「日本企業はPoC(概念実証:実現可能性の検証)を実施してやりっぱなしという状況がまだ散見される」と指摘。AI活用はPoCから始めて成果が確認されれば全社に展開――という進め方で効果を回収していくのが基本だが、「そのファーストステップとしてのROI測定がきっちりできていない点が米国との差だ」と説明する。
さらに、「AIガバナンス」と呼ばれるAIが生み出すリスクに対する取り組みでも、日本企業の遅れが目立つ。「AIシステムおよびプロセスのガバナンス強化」の実施比率は米国の43%に対し、日本は34%にとどまった。日本は検討段階にとどまり、米国のようなアクションにまで至っていない。
AI固有のリスクに対する注目度では、「サイバーセキュリティに関するリスク」(54%)、「プライバシーに関するリスク」(44%)が上位を占めた。これらは従来から注目されるリスクであるのに対し、AI固有の新たなリスクについては関心の低さがうかがえる。
例えば「安全性・信頼性に関するリスク」。自動運転に搭載している物体認識のAIが障害物を認識できず衝突事故を起こす――などのリスクが挙げられるが、注目度は37%にとどまった。AIの判断結果に対して説明責任を果たすことができない「説明可能性に関するリスク」についても22%だった。AIガバナンスの理解が十分ではない現状が見て取れる。
ほかにも、AIの導入状況で日米の差は埋まりつつある一方、「全社的に導入」している割合を見ると米の26%に対し、日本は13%と2倍の差が開く。
日本企業の具体的なAI活用事例は、製造業の生産性向上や業務効率化を目的としたものが多く、CX(顧客体験)向上を目的とした事例が多い米国とは特色が異なるという。PwCは「日本のAIを活用した業務効率化は一通りやりつくした印象がある。今後は新しいCXを作り出すことが求められる」と指摘した。
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