日産SAKURAは軽自動車のゲームチェンジャーになり得るか?(2/3 ページ)
日産自動車が、以前から予告していた軽BEVの「SAKURA」を発表した。5月20日の会見で、日産の星野朝子副社長は「軽の常識を変えるゲームチェンジャー」とSAKURAを評した。
20kWhのバッテリー、航続距離180キロ
航続距離については20kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードで180キロとした。BEVのリーフが40kWhモデルで322キロ、60kWhモデルで450キロなので、軽規格ならではの車体の軽さも相まって容量あたりの走行距離は伸びている。
180キロという航続距離については「94%のシーンをカバーする」と日産は言う。1日あたりの走行距離は半数以上が30キロ程度なので、日曜の夜に自宅で充電すれば週末までは充電なしで乗れるというのが、日産の論理だ。
BEVにおける最大のトレードオフはバッテリー容量にある。バッテリー容量を大きくすれば航続距離は長くなるが、価格は高くなる。BEVの普及においての課題の1つは、航続距離が不安というもので、これは統計的な話というよりも心情的な話だ。米テスラは、この点を重視して600キロ以上の航続距離を実現し、高価格帯ながらBEVで最も売れるメーカーとなった。
これは軽自動車においても同様だ。三菱自動車が2009年に発売した軽BEVの「i-MiEV」は、16kWhの電池を搭載し航続距離は160キロだった。これは現在の燃費計算方式に当てはめると100キロ程度になると見られる。この当時も、日常の足として使う軽自動車ならば100キロ走れば十分というのが、メーカーの論理だった。しかし438万円(税別)という価格の高さとともに、この航続距離の短さもネックとなり、現在は販売を終了している。
当時と状況が異なる点でいえば、ガソリン価格の高騰とともにガソリンスタンドが地方でどんどん減っていることだ。「ガソリンスタンドに行くのに10キロ、20キロ走らなければいけないという地方が増えている。自宅で充電できる生活様式に変えていくきっかけになるクルマになる」と星野氏は言う。
関連記事
- 日産と三菱、軽EV「SAKURA」「ekクロスEV」発表 価格は180万円台から
日産自動車と三菱自動車は5月20日、軽自動車規格のEVとなる新型車、「SAKURA」(日産)、「ekクロスEV」(三菱)を発表した。価格は補助金込みで180万円台から。 - 軽自動車EVに再挑戦する日産・三菱の勝算
近々、日産と三菱自動車から、軽自動車のEVが発売される予定です。ただし、軽自動車規格のEVは、なにも今回が世界初というわけではありません。 - 日産、全固体電池EVを28年販売 充電時間3分の1に
日産自動車は11月29日、長期ビジョン「アンビション2030」を発表し、次世代バッテリーである全固体電池を使った電気自動車(EVを投入)を2028年に市販する計画を明らかにした。 - 新生日産が目指す道とは 電動化への“野望”を読み解く
日産は今、再生の道を歩んでいます。日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。その直後のコロナ禍を経て、4か年計画「NISSAN NEXT」を発表。さらに新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表しました。 - EVは電力不足の敵か救世主か
日本の電力供給体制の脆弱性を明らかにした昨日の電力ひっ迫。ここで気になるのがEVという存在です。電気で走るEVはどのような存在になるのでしょうか。ポジティブなのか、はたまたネガティブなのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.