ネコを広報課長に起用 大阪の老舗・中小企業が編み出したSNS発信戦略:防災業界のアップデート目指す(2/2 ページ)
大阪で防災設備業を営む中小企業のSNS投稿が、多くのユーザーの心をつかんでいる。昨年、創業60年を迎えた青木防災(大阪市平野区)。広報課長に起用したネコのタマスケが人気を博し、フォロワー数は3万6000人を超える。情報発信の極意、そして、発信に込める「防災のプロ」としての思いを聞いた。
同社は、青木さんの祖父、進さんが1961年に「青木消火器工業所」として興した。当時は消火器の製造・販売を手がけ、73年に青木防災として法人化し、事業を拡大。現在、従業員数は15人。消防用設備等の施工・点検・訓練などのサービスを、大阪府を中心に関西一円で展開している。
防災のソフト面を担うタマスケ
青木さんは、防火・防災に対してある課題を感じているという。
現状、消防法に基づいて建築物に消防用設備を設置するといったハード面の対策は浸透している。一方で、消火用設備の使い方や防火・防災に対する意識といったソフト面になると、「理想に対してギャップが大きい」と青木さんは指摘する。
火災は常日頃起こるものではなく、忘れた頃に突然起こるもの。常にその危険性を意識して生活するのは困難だ。
「99.99%は安全だが、残りの0.01%の危険性に目を向けるのが、われわれの仕事。防災への意識を高め、知ってもらう。その部分で、タマスケの手を借りている」と青木さんは話す。
人の意識を強制的に変えることはできない。内側から喚起されるような、人の心をくすぐるコンテンツが必要となる。それが広報課長タマスケの役割なのだという。
タマスケを生かした次なる発信戦略は?
タマスケを広報課長に起用したことが功を奏し、今や「防災業界のインフルエンサー」と称される同社。“タマスケ効果”は大きいといい、設備点検に訪れたマンション先の住人から「青木防災ってあの青木防災?」などと声をかけられることも多くなった。
今後、青木さんはSNS発信にさらなる工夫を凝らしていきたいという。配信する動画に、消防に関する実際のニュースを混ぜるなどし、より本格的な情報発信を進めていく予定だ。
ネコの広報課長を窓口に、防災企業として認知度を高めた同社。情報発信の方法を日々磨くのは、ひとえに「防災のプロ」として人々の安心・安全を守るため。今後の目標について、青木さんはこう語った。
「人々の日常に防災意識を浸透させ、消防設備業界のアップデートを牽引するような存在になりたいです」
関連記事
- 忘れ物にメッセージを添えて返送 JR岡山駅の“神対応”に共感広がる
乗客の忘れ物にメッセージカードを添えて送り返すJR岡山駅の取り組みが「心あたたまる」とTwitterで反響を呼んでいる。乗車券と同じデザインのカードには、岡山弁で「また、おいでぇ」と赤いスタンプが押印。受け取った大学院生の投稿から共感が広まった今回の取り組みは、一体どのような経緯から始まったのだろうか。 - 1億DLを突破 オードリー・タン氏も認める詐欺電話・SMS防止アプリ「Whoscall」とは?
詐欺SMSや迷惑電話を未然に防ぐ台湾発のアプリ「Whoscall」が世界でユーザーを拡大させている。台湾では2人に1人が利用し、全世界のダウンロード数は1億に達する。デジタル担当大臣のオードリー・タン氏も評価するというアプリは、一体どのようにしてうまれたのか。 - “ジョジョ立ち”マネキンが脚光 洋服の青山、お堅いイメージ脱する戦略とは?
大手紳士服店の「洋服の青山」がスーツを扱う“お堅い企業”からイメージチェンジを図っている。躍動感あふれるマネキンをショーウィンドウに展示して話題を集めているほか、ツイッターの公式アカウントは直近2年でフォロワー数を20万人以上増やしている。一体、どのような戦略を取っているのか。担当者に話を聞いた。 - 女性管理職比率51%のイケア 3店舗兼務の女性店長に聞くキャリアの歩み方
2020年から東京都内に相次ぎ出店し、新たなファンを開拓しているスウェーデン発祥の家具大手イケア。この都心3店舗(原宿、渋谷、新宿)の店長を、一手に担う女性がいる。本社の受付業務からスタートし、都心型店舗の責任者を務めるに至った女性店長に、これまでのキャリアや仕事観を聞いた。 - 「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」家具大手ぬいぐるみ なぜ人気?
「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」――。大手家具メーカーの”看板商品”とも言えるぬいぐるみの人気のわけを探る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.