“壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスク:フィデリティ・グローバル・ビュー(1/4 ページ)
世界の秩序が再定義され、スタグフレーションリスクが高まっています。フィデリティ・インターナショナルの運用チームが4〜6月期に重要になると考える3つのテーマと各資産クラスへの影響についてご紹介します。
ロシアとウクライナの戦争は、経済的にも、地政学的にも世界の秩序(あるいは、壮大なチェス盤、The Grand Chessboard*1)を劇的に再定義することになりそうです。短期的には、ロシアの軍事侵攻と制裁による貿易面、金融面でのショックが世界的なインフレ圧力の上昇につながっています。
*1 壮大なチェス盤(The Grand Chessboard):冷戦期のユーラシアの政治力学を説明するため、ポーランド系米国人政治学者で米大統領の顧問を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏が提唱した理論。
経済成長や全体的な信頼感への打撃は大きくなる可能性が高いものの、その規模や期間には、なお不透明感が根強いです。欧州は最も大きな影響を受ける地域であり、少なくとも小幅な景気後退に陥る可能性が高いと言えます。一方で、今のところ米国への影響は比較的限られています。しかし、戦争によるインフレ圧力の高まりは、避けられないでしょう。
エネルギーと資源の相互依存関係はすでに変化しつつあります。それは、数年に及ぶ世界規模での調整になることは間違いなく、さまざまな資産クラスに影響が及ぶと見ています。
フィデリティでは、足元の4〜6月期(第2四半期)は3つのテーマに焦点が当たると見込んでいます。
ウクライナ戦争の時間軸が世界経済の先行きを左右
ウクライナ戦争は、すでに経済に対して甚大なダメージを与えています。この戦争がどう進展するかは、欧州を中心とした当面の世界経済の見通しを大きく左右するでしょう。解決に向けたプロセスや貿易面での混乱の緩和などが、7〜9月期(第3四半期)以降を見通す上での鍵になります。
一方で、当面はエネルギー価格が落ち着きを取り戻し、サプライチェーン(供給網)の混乱が収まるという期待もしにくいでしょう。これらは引き続き経済成長の足かせとなり、すでに高いインフレ率をさらに押し上げる要因になると見ています。
政策当局と市場参加者にとって、この構図は非常に複雑に映ります。市場はまだ、極端なテールリスクを含む、あらゆる可能性と起こり得る結果のすべてを織り込んではいないと考えています。そのため、私たちは、変化に対応できる敏捷性を持ちつつ、適切なリスク回避の手段も活用するよう提案します。
関連記事
- 世界の秩序が変わり、冷静に判断する時
欧米の支援を受けるウクライナとロシアの衝突が続く中、これまで以上に中国の動向が注目されています。フィデリティ・インターナショナルのCIOが今後想定されるシナリオとグローバル経済の行方を解説します。 - ウクライナ戦争が引き起こす企業と投資家の社会的、倫理的ジレンマ
ロシア人に生活必需品を売るべきか――。ウクライナ戦争は企業に難しい課題を投げかけました。企業はESGと倫理的な配慮の間でどうバランスを取るべきでしょうか。フィデリティの取り組みとともにご紹介します。 - ロシア依存からの脱却が再生可能エネルギーに与える影響
EUはロシアの天然ガスに依存してきた状況から脱却すると発表しました。これにより、長期的には再生可能エネルギーへの転換が加速すると見られます。 - 金利ショックで膨れ上がる債務コスト、最大の影響は日本
金融引き締め政策はすでに膨れ上がった債務返済コストを一段と増やす恐れがあり、インフレとの戦いのために利上げを実施しようとしている中央銀行が巻き添えを食ってしまう危険性があります。 - ツイッター買収で重要な役割を担うプライベート・デット市場
テスラCEOのイーロン・マスク氏によるツイッター買収は、プライべート・デット市場の存在感の強さも証明しました。
© フィデリティ投信株式会社 All Rights Reserved.