世界の秩序が変わり、冷静に判断する時:フィデリティ・グローバル・ビュー(1/4 ページ)
欧米の支援を受けるウクライナとロシアの衝突が続く中、これまで以上に中国の動向が注目されています。フィデリティ・インターナショナルのCIOが今後想定されるシナリオとグローバル経済の行方を解説します。
(本稿は3月16日時点の情報をもとに、フィデリティ・インターナショナルのGlobal CIO, Asset ManagementであるAndrew McCafferyが独自の見解をもとに執筆しています)
背景
第2次世界大戦後の地政学的な世界の秩序は、極めて流動的な状態にあります。
ロシアのウクライナへの侵攻とそれに続く米国、欧州連合(EU)、英国などの同盟国による前例のない経済的・金融的な制裁は、30年に及ぶ急速なグローバリゼーション化を経た国家間の相互依存の重要性とその行く末に焦点が集まるきっかけとなりました。
1990年代初頭のソビエト連邦の崩壊とともに始まり、その後2000年代初頭の中国の世界貿易機関(WTO)加盟によって加速したグローバル化の大きな流れは、経済、金融、社会の分野での相互依存を一段と深めました。
しかし、主要な軍事・経済大国の国益は、欧州での戦争を引き起こすほどに乖離(かいり)しました。そしてこの戦争は、同盟国、特にロシア産燃料に依存する欧州の防衛・エネルギー安全保障政策に大きな変化をもたらすきっかけとなりました。大きな地殻変動がいま、起きているのです。
中国と米国の関係
前大統領のドナルド・トランプ氏が大統領に就任した2017年以降、米国と中国の間では大きな意見の隔たりが相次ぎました。経済的に依存し合っているという視点で見ると、両国の関係はこれまで以上に難しくなっています。
2018年に始まった「米中貿易戦争」は、グローバル化の時代で初めて、地政学が「地政経済学(geo-economics)」へと変容しつつあることを示しました。新型コロナウイルスのショックは、中国に対する米国の「3つのC」(競争=competition、 協調=cooperation、対立=confrontation)によってとらえられる、未解決の根本的な問題を覆い隠す、不安定な停戦状態をもたらしているに過ぎないと言えるでしょう。
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