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世界の秩序が変わり、冷静に判断する時:フィデリティ・グローバル・ビュー(2/4 ページ)
欧米の支援を受けるウクライナとロシアの衝突が続く中、これまで以上に中国の動向が注目されています。フィデリティ・インターナショナルのCIOが今後想定されるシナリオとグローバル経済の行方を解説します。
地政学的な変化によって中国に目を向けるロシア
ロシアのウクライナ侵攻はグローバルの地政学、地政経済学の現実とその重要性を突如、大きく変化させました。ロシアの経済・金融システムの崩壊を狙った厳しい制裁によって、中国の役割と地政学的なスタンスは、中国政府の台湾に対する長期的な接し方も含めて、より注視されるようになりました。
エネルギー輸出など一部を除いてロシアが西欧の経済・金融システムから次第に切り離される中で、短期的に、経済的な影響を抑えるため中国に軸足を移そうとする意図は明らかです。さらに、厳しい情勢に立たされているロシア軍から武器供与の依頼を受けたとされる中国が、米国や西側の同盟国が関与する戦争に直接関わる可能性も懸念されています。ウクライナ戦争での中国の立ち位置をゆがめようとしているとして、中国政府はこうした報道を否定しています。
どこに向かうのか?
足元の地政学的状況が安定していないことは、言うまでもありません。ウクライナでの戦争が今後どう展開し、ロシアがどう反応するか、複数のシナリオが想定されます。
ロシアが支援を求める一方で、中国は中立的な立場を維持しようしています。そして投資家は、最重要である米国・EUと中国の経済的な関係がロシアに科されたような制裁によってどれほど悪化する可能性があるのか、注目しています。世界の地政学的背景が大きく変わる中、投資家の信用を得られるかどうかは、中国がどのように現在の状況を乗り切り国益とのバランスを確保していくのか次第です。
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