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世界の秩序が変わり、冷静に判断する時:フィデリティ・グローバル・ビュー(3/4 ページ)
欧米の支援を受けるウクライナとロシアの衝突が続く中、これまで以上に中国の動向が注目されています。フィデリティ・インターナショナルのCIOが今後想定されるシナリオとグローバル経済の行方を解説します。
相互に大きく依存し続ける中国と諸外国
中国はロシアよりもグローバル経済への影響が大きく、先進国の市場とより深く結び付いている点には留意する必要があります。購買力平価ベースの世界のGDPに占める割合はロシアが3.1%にとどまる一方、中国は18.7%に達します。
エネルギー供給を通じた欧州とロシアのつながりは、確かに大きいです(天然ガスの40%、原油の25%をロシアから輸入)。しかし、それはEUや他の同盟国が侵攻の代償としてロシアに対して広範囲に厳しい制裁を科さない理由にはなりません。
中国の影響の大きさを示すもう1つの例を挙げます。中国の対外資産残高は約9兆ドル、対外負債残高は約7兆ドルで、対外純資産残高は約2兆ドル(2021年9月)でした。最新のデータに基づくと、ロシアの対外資産残高は約1.6兆ドル(うち約半分は凍結)、対外負債は約1.1兆ドル(うち5000億〜7000億ドルが全額評価損の恐れ)でした。
さらに、貿易に関して言えば、その違いは格段に大きくなります。世界の輸出額に占める中国の割合は14.2%で、ロシアはわずか2.2%(輸入額のシェアは中国が10.5%、ロシアは1.2%)です。
最後に、金融市場と通貨の一段の国際化が政策当局者の間で広く注目されていることから、中国が金融分野における世界とのつながりをさらに深める可能性が高いという点も、注目に値します。ここ数カ月の中国人民元の強さは、その一例でしょう。
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