新幹線から富士山見やすく――JR東海、車内スペースを改良 狙いは?:令和版「マウント富士計画」?(2/2 ページ)
JR東海は東海道新幹線の最新車両「N700S」を2023〜26年度にかけて、追加で19編成投入すると発表した。追加投入にあたり、車内スペースを一部改良。多目的室の窓の高さを変更し、車いす利用者がより景色を楽しめるようにする。改良の狙いを担当者に聞いた。
令和版「マウント富士計画」の再来?
車窓の位置の見直しで、富士山の眺めをより良くさせる今回の改良。SNSでは「令和版マウント富士計画」などと評する声が挙がっている。
マウント富士計画とは何か――。それは「富士山」を眺めながら食事を楽しんでもらうための計画だ。
1964年、東海道新幹線の東京〜新大阪間が開業した。72年には山陽新幹線が新大阪〜岡山間、75年には博多まで伸びる中、当時の国鉄は食事への需要が高まると想定。74年以降「食堂車」を導入していった。
当時、食堂車には山側に通路があり、通路と食事スペースの間に壁があったため、富士山を眺めることができなかったという。
「富士山を眺めながら食事をしたい」という乗客の要望を受け、国鉄は79年、山側に窓を設置する工事を実施した。これが通称「マウント富士計画」だ。
その後、新幹線の高速化などに伴う利用者減で、食堂車は2000年3月のダイヤ改正で姿を消した。
JR東海広報の門山さんは、SNSでマウント富士計画が言及されていることに対し、「今となっては計画についてもともと知らない社員も多い」と話す。
「新幹線から富士山」は特別?
「新幹線から富士山を楽しみたい」という思いは、食堂車が廃止された今も変わらない。動画投稿サイトには、新幹線から富士山を楽しめる絶景ポイントを紹介する動画が数多く投稿されている。中には、外国人観光客の投稿も多く、富士山に胸打たれるのは日本人だけではないようだ。
このほか、新幹線の座席予約についても、富士山が望める窓側から予約が埋まる傾向があるという。
さらに、JR東海では「天気が良く、富士山が車窓からきれいにご覧いただける際には、乗務員の判断により、車内放送でご案内をさせていただいております」(門山さん)としており、同社としても、車窓から望む富士山を乗客に楽しんでもらう大切な要素として捉えている様子がうかがえる。
同社は今回の改良に約1140億円を投じる。車両スペースの改良と合わせ、廃車になる車体のアルミ部材を車体の屋根部に再利用するなど、環境負荷の低減も図る。
最新技術で最良の乗り心地を実現し、さらに「富士山が眺めやすい」というきめ細やかな快適さまで追求したN700S。まさしく「N700シリーズ中、最高の新幹線車両」といえそうだ。
関連記事
- 「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」家具大手ぬいぐるみ なぜ人気?
「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」――。大手家具メーカーの”看板商品”とも言えるぬいぐるみの人気のわけを探る。 - 味の素“シンプルすぎる”レシピ 10年前に開発したメニューがいま大人気の訳
味の素が開発したレシピが「シンプルすぎる」と大きな話題を呼んでいる。豚ひき肉のかたまりをマヨネーズで味付けし、そのまま焼くだけ――。Webサイトにアクセスが集中し、一時パンクするほどの注目を集めたレシピは、2010年に開発したもの。なぜいま、反響を呼んでいるのか。開発した経緯などを担当者に聞いた。 - 廃業決めた老舗和菓子店を救済 社長が語った「マクドナルドを見習え」の真意
看板商品「相国最中(しょうこくもなか)」などで知られ、5月16日に廃業を発表した和菓子店「紀の国屋」。26日、スイーツのインターネット販売を手がけるアイ・スイーツ(東京都文京区)は、紀の国屋の元従業員20人を雇用し、「匠紀の国屋」として新たに事業を始めると発表した。廃業の発表からわずか10日で新ブランドでの再始動が決定――という急転直下の事態に驚きの声が上がる。この間に一体、何があったのか。アイ・スイーツの社長に話を聞いた。 - “ジョジョ立ち”マネキンが脚光 洋服の青山、お堅いイメージ脱する戦略とは?
大手紳士服店の「洋服の青山」がスーツを扱う“お堅い企業”からイメージチェンジを図っている。躍動感あふれるマネキンをショーウィンドウに展示して話題を集めているほか、ツイッターの公式アカウントは直近2年でフォロワー数を20万人以上増やしている。一体、どのような戦略を取っているのか。担当者に話を聞いた。 - 1億DLを突破 オードリー・タン氏も認める詐欺電話・SMS防止アプリ「Whoscall」とは?
詐欺SMSや迷惑電話を未然に防ぐ台湾発のアプリ「Whoscall」が世界でユーザーを拡大させている。台湾では2人に1人が利用し、全世界のダウンロード数は1億に達する。デジタル担当大臣のオードリー・タン氏も評価するというアプリは、一体どのようにしてうまれたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.