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クルマのパワーとトルクの関係 高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)

実際に走りを左右するのはトルク、それも最大トルクではなく、それを含めたトルク特性こそが加速力と加速フィールを決める。

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パワーとトルクは何が違う?

 パワーとは直訳すれば力だが、実際にはエンジンの出力とは仕事量のことだ。最高出力を示す単位にPS/rpmというものがある。これはエンジンが何回転の時に最高出力を発揮するか示したもので、rpmとはレボリューション・パー・ミニッツ、rev/minと表記することもできる。つまり1分間の回転数を表したものだ。

 4気筒エンジンの場合、クランクシャフトが2回転で4気筒すべてが燃焼することになるが、エンジンの回転数によって実際の燃焼回数は変わってくる。つまり1000rpmで回っている時に比べて3000rpmで回っている時には、燃焼回数は3倍になり、6000rpmでは6倍になる。同じ1分間という時間の中でも、燃焼の回数が異なる。

 最高出力の場合、1PSは1秒間に75キログラムの物体を1メートル動かした仕事だから、1分間ではなく1秒間に行なわれる仕事であり、最高出力時の実際の燃焼回数はrpmの60分の1、ということになる。

 同じエンジンで燃焼回数が異なれば、当然多い方が力がある。これがパワーだ。つまりクルマにおけるパワーとは1秒間の合計出力のことを示しており、それが最大限に発揮されるのが最高出力であり、発生回転数なのだ。軽自動車とオートバイが、同じ600cc程度の排気量でも最高出力が大きく違うのは、その発生回転数が異なることが大きく影響している。

 それに対してトルクは純粋な力のことだ。ねじりモーメントとして物体を回転させる力のことで、エンジンでは1回転させる力の大きさそのものを表している。

 例えるなら、出力は10分間で自転車で進める距離であるのに対して、トルクは腕相撲の強さのようなものだ。10分間で自転車で進む距離は、ペダルを速く回すかゆっくり回すかでも変わる。それに対して、腕相撲はいくら勝負に時間をかけても結果は同じ。筋力がある方が勝つことになる。

 最大トルクの表記もkgf・m/rpmと、最大出力と同じrpmという単位が使われていることも、思い違いを増長させたり、理解が進まない原因だろう。これは最大トルクの発生回転数帯を示しているものだが、トルクはその回転数帯での1回転の力のことだからだ。だから厳密にはrpmではなく、rpm/rとでもするのが正しい。

 しかし、そうなるとkgf・m/rpm/rなどとますます分かり難くなってしまう。それに実際にドライバーはタコメーターを見てエンジンの回転数を判断するため、ガソリン車にとって分かりやすいrpm表示が使われていることもあり、最大トルクの表記もrpmに統一されたのだろう。

 つまりトルクはエンジン1回転で生まれる力であり、それを1分間の合計としたものが出力なのである。別々に計測して評価しているとか、トルクとパワーは別物なんて思うのは間違いで、パワーは単なる計算値なのだ。

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