SDGsを発明した人は本当に頭がいい、皮肉な理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
ここ数年、「SDGs」(持続可能な開発目標)を耳にすることが多くなった。17の目標はどれも必要なものかもしれないが、実践することによって日本はどのようなメリットを手にすることができるのだろうか。
ゲームのルールを変える
タイトルが刺激的だが、池田氏はSDGsが掲げている17の目標をすべて否定しているわけではない。「質の高い教育をみんなに」や「ジェンダー平等を実現しよう」のような社会インフラの整備や人権問題などについて国際社会で協力をしていくことは悪いことではないと言っている。
ただ、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策」「飢餓をなくそう」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」というエネルギー、食料、そして地球環境という分野の目標については、「誰も反対できないような美しい言葉を並べただけ」の「実現性に乏しい絵に描いた餅」と批判しているのだ。
だから、これを真面目に進めたところで、サステナブルな社会など実現できない。それどころか日本にとって、このSDGsを推進すればするほど「一人負け」の状態になってしまい、日本人が貧しくなる恐れもあると主張している。その理由を端的に説明している部分を引用させてもらう。
『SDGsは、アメリカ、中国、ロシア、中東と比べて、天然エネルギーの資源を持たない欧州が「自らの劣勢を挽回しよう」という、エネルギー安全保障に関する戦略的な意味合いが強い。ハイブリッド車で世界一の技術を誇る日本がSDGsなんて進めたところでなんのメリットもなく、むしろ損をすることの方が多い』(P102)
ロシアのウクライナ侵攻で注目されたように、欧州諸国は天然ガスでロシアにガッツリと依存していた。こういう資源のない国が資源を大量に持っている国に対して優位になるためにはどうすればいいのかというと、最も簡単で効果的なのは、「ゲームのルールを変える」ことだ。
つまり、石油やガスなんてのはたくさん持っている国が強いという時代はもう終焉(しゅうえん)を迎えており、これからは太陽光、風力、水力などの「クリーンエネルギー」を推進している国が「将来有望」という風に世界の常識を変えてしまうのだ。こうなれば、天然資源の乏しい欧州は米国やロシア、さらには中国がエネルギーをちらつかせてもビビる必要がない。これまで通り、世界経済の主導権を握り続けることができるというわけだ。
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