楽天モバイル「0円廃止」 ブランド毀損とユーザー離れよりも深刻そうな余波:優良事業にも影響か(1/3 ページ)
安さを売りに携帯キャリアへ打って出た楽天モバイルだが、ここにきて急ブレーキがかかりそうだ。スマートフォンを複数台持ちするユーザーを中心に契約者を増やしてきた「0円プラン」を廃止する。ユーザー離れも懸念されるが、筆者はそれ以上に深刻そうな影響を指摘する。
携帯電話の第4勢力である楽天モバイルが、主力サービスである「0円プラン」の廃止を発表して話題になっています。同プランはデータ通信1GBまで月額無料というサービスであり、携帯電話キャリアとして後発の楽天モバイルの新規会員取り込み策の切り札として多くの支持を得てきただけに衝撃をもって受け止められています。
0円プランは約1年前の2021年4月にスタートしました。当時の菅義偉首相の肝いりで進められた携帯電話料金の官製値下げ圧力によって、先行3キャリアが続々大幅値下げプランを発表。当初「月額2980円使い放題」をウリにして新規参入した楽天モバイルでしたが、3キャリアが同水準まで値下げしたことによって、電波状況が悪く同じ価格帯では戦えない楽天がやむにやまれず打ち出したのが、0円プランでした。
0円プランはスマートフォンを複数台持つユーザーなどからの強い支持を得て、22年2月時点で楽天モバイルの契約者数は550万人を突破するなど、新規加入者増強策としては一定の成功を収めていました。一方でスマホを複数台持つユーザーは「0円」が適用される1GBまでしか楽天モバイルの回線を使用しないという例も多くみられました。
また0円契約だと、同社が不安定な通信領域をカバーするためにローミング契約を結んでいるKDDIへの回線使用料支払いコストが回収できない、という構造が当初から指摘されてもいました。もちろん楽天モバイルとしては、その他の事業への相乗効果を見込んでの戦略だったわけで、今回の0円プランの廃止はそれがうまく進んでいなかったことの証ともいえます。
予想以上の赤字で損益分岐点も遠くに
楽天モバイルがリスクを承知であえて0円プランを導入したのは、事業の黒字化に向けて絶対的な契約者数の確保が必要だという狙いがあったからでしょう。まずは収益源を生み出すために母集団である契約者数を増やすこと、その上で次のステップとして増えた契約者からいかにして収益を稼ぐかという方向に転じるのは、マス戦略策定の常套(じょうとう)手段でもあります。
それがわずか1年余りで廃止せざるを得なくなったのは、モバイル事業の想定以上の赤字の増大が原因であることに相違ありません。事業開始来の赤字続きでかつ22年1〜3月期で事業単体では1350億円という過去最大赤字の計上は、他の事業がなければ破綻しているレベルであり、0円プランは結果として失策であったといわざるを得ないでしょう。
楽天モバイルは事業参入時に、損益分岐点契約者数は700万件と公表していました。これは「月額2980円使い放題」で会員を集めた場合の試算であり、現状の平均利用金額水準は3分の2程度まで下がっているとみていいかと思います。700万件とされていた損益分岐点契約者数は、単純計算ですが約1000万件程度にまで上昇したと想定できるでしょう。
すなわち、550万件という契約者数は、黒字化に向けてまだまだ道半ば。0円契約で契約者数は激増したものの、モバイル事業の赤字幅は増大してしまったのですから、結果としてマーケティングでいうところの「バーゲンハンター」を増やしただけだったわけで、基本戦略は大幅な見直しを迫られたといえます。
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