コラム
楽天モバイル「0円廃止」 ブランド毀損とユーザー離れよりも深刻そうな余波:優良事業にも影響か(3/3 ページ)
安さを売りに携帯キャリアへ打って出た楽天モバイルだが、ここにきて急ブレーキがかかりそうだ。スマートフォンを複数台持ちするユーザーを中心に契約者を増やしてきた「0円プラン」を廃止する。ユーザー離れも懸念されるが、筆者はそれ以上に深刻そうな影響を指摘する。
その時期は未定ながら、いまだに湯水のごとく資金を垂れ長す通信基地局整備が重荷のモバイル事業への資金手当てが目的なのは明らかです。楽天グループは同様の目的で、既に楽天銀行の上場準備も進めており、金融子会社2社の上場は目先の出費を埋めるために将来にわたる利益(21年度決算では銀行と証券合算で500億円近くの利益を計上)を手放すという重大な選択でもあります。モバイル事業の苦境を表す、0円プランの廃止よりも数段重たい決断といえるでしょう。
0円プランの廃止は業界参入時に掲げた価格破壊路線の放棄であり、加えて金融事業の資金化計画まで飛び出し苦境にあえぐ楽天。現状は、単に個別戦略で失敗したというだけでなく、モバイル事業に乗り出したこと自体が基本戦略の失敗であった、といえるような状況に追い込まれつつあります。楽天の行く末には、「モバイル事業売却=店じまい」という選択肢もいよいよ現実を帯びてくるように思えてなりません。
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