3期連続「炎上」で絶体絶命だったヤプリ、なぜ解約率1%未満を達成できたのか?:アプリ制作プラットフォームを展開(1/3 ページ)
SaaS業界では「サービス解約率を3.0%未満に抑えましょう」といわれている中、アプリ制作プラットフォーム「Yappli」の解約率は1%未満。顧客満足度の高さがうかがえるが、2017年には「3期連続炎上」という暗黒の時代もあったという……。
「プログラミング不要でアプリが作れる」――そんなうたい文句とともにアプリ業界に舞い降り、市場を席巻したサービスがある。ヤプリ(東京都港区)が提供するアプリ開発プラットフォームサービス「Yappli(ヤプリ、以下ヤプリ)」だ。
2013年にヤプリが誕生するまでは、アプリ制作=プログラミングスキル必須というのが一般的な認識だったと思う。スキルの有無にかかわらずアプリが作れるようになったのは、多くの企業にとって大きな転換点となっただろう。
現在、ヤプリ経由で開発されたアプリは728に上る。21年度の解約率は0.68%と、SaaS業界で目標値といわれている3.0%を大きく下回る。契約アプリ数は前年同期と比較して約25%成長を維持し、平均月額利用料も同様に7.7%伸長を記録した。22年度はテレビCMなどのマス向け広告に力を入れ、導入社数の増加を目指す。
飛ぶ鳥を落とす勢いの同社だが、実は3期連続「炎上」という暗黒時代もあったという。深夜残業、休日出勤、クライアントへの度重なる謝罪を乗り越えて、顧客満足度の高いサービスに生まれ変わるまでのストーリーを聞いた。
300のアプリが一斉にダウン
ヤプリが炎上に見舞われたのは17年のことだった。それまでtoC向けサービスとして展開していたが、toBへの導入が急増した。エンドユーザーが100万人を超える企業に導入されたことでシステムが負荷に耐えられず、ダウンする現象が頻発したのだ。
「当時のお客さまはアパレルや飲食店がメイン。必然的に人出が増える土日にアプリの利用が集中しました。プッシュ通知やクーポン発行などの機能が一斉に使用されるため、システムが作業負荷に耐えられず、アプリがフリーズする事件が多発しました」(広報 荒川萌氏)
アプリがサクサク動くことが”当たり前”の現代人からすると、急にアプリが動かなくなるストレスはかなり大きいだろう。アプリをアンインストールする人も出てくるかもしれない。システム基盤の改善が急務だったわけだが、同社が取った作戦は非常にアナログなものだった。
「土日に配信予約されたプッシュ通知の数を確認し、集中している時間帯を見つけては、複数社に『プッシュ通知の時間を1時間変更できませんか』と直接相談していました。100万人以上が利用するアプリに一気にプッシュ通知を送るとシステムがダウンするので、1万人ずつ送信する運用にしていたと聞いています」(荒川氏)
エンジニアはシステムダウンが発生したと同時に復旧作業に取り掛かり、営業とカスタマーサポートはクライアントからの問い合わせに対応。週末出社や深夜残業など社内全体が疲弊していたという。しかし、ヤプリの炎上劇はシステムダウンにとどまらない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サービス解約者の5人に1人が再登録 完全栄養食「BASE FOOD」のやめさせない仕組みづくり
完全栄養食の「BASE FOOD(ベースフード)」は、定期購入型サービスの利用者が10万人を超える人気ブランドだ。その人気を支えているのは、「BASE FOOD Labo」呼ばれるコミュニティーサイトの利用者たちだ。彼らはなぜ、BASE FOODに強い愛着を抱くのだろうか。
「営業配属だけはイヤだ」 新卒は、なぜ営業職にアレルギーを持つのか?
「企業の人材不足」に関する調査によると、「営業職」の人員不足が最も高いことが分かった。「営業はキツい」「新規営業をやっている女の子が泣いていた」などSNS上では営業職に関するネガティブなエピソードも見られる。しかし、総合職の約7割が営業職に配属される時代だ。企業側は苦手意識を持つ新卒をどのようにマネジメントすべきか?
急成長サブスク企業、カスタマーサクセス職採用を断念した3つの”誤算” 応募は180人もいたのに、なぜ?
サブスクはコロナ禍で大きく業績を伸ばしたサービスの一つだ。おやつの定期便サービスを展開するスナックミーも会員数を大きく伸ばしたものの、新規会員を定着させる施策を講じることが急務となった。そこでカスタマーサクセス職の採用に乗り出したが、結果は失敗に終わることに。採用を断念することになってしまった3つの”誤算”とは?
月400時間労働のブラック企業、平均残業4時間の超ホワイト企業に 大変革を支えた「3つの制度」とは?
2000年創業のシステム開発のゆめみ、一部の創業メンバーの当時の労働時間は月に400時間を超えていたという。離職率が20%超えの時期もあった。創業したばかりという状況はあるものの、ブラック企業と言っても過言ではない。そんな企業が改善を重ね、月165時間労働・離職率2%にまでたどり着いた。どのような取り組みがあったのだろうか? 変革の要となった3つの制度とともに振り返ってみたい。
「仕事終わっていないけど、定時で上がります」 中年社員は新卒との”ジェネレーションギャップ”をどう解消すべきか?
上司や先輩は、4月に入社した新入社員に新鮮さを感じるとともに、ジェネレーションギャップに悩みはじめるタイミングだろう。最近の若者は働くにあたってどのような意識を持っているのか? また、ジェネレーションギャップを解消するために中年社員はどのような働きがけをすべきだろうか?

