【独自】タニタの不健康な“お家騒動” 正反対の主張で争う、現社長と父・兄弟:パワハラの報告も(4/4 ページ)
体脂肪計などを製造・販売するタニタで、“お家騒動”が起きている。現社長の就任後、社長の父や兄弟が相次いで退職。筆者が詳細を取材すると、今もなお正反対の主張で争う現社長と父・兄弟の現状が浮かび上がってきた。
意見は対立 内部告発者と富士氏の見解は
しかしこの会社側の見解に対しても、内部告発者や富士氏は疑念を呈している。
内部告発者は筆者の取材に対し、「『タニタ総合研究所』はそもそも、タニタの60歳以上の社員の定年後の受け皿として創設された派遣会社であり、派遣先はタニタ。当然、千里氏の意向に沿わないと生き残っていけない。また、本社内でタニタ総研は総務部の隣に位置しており、総務部長はパワハラ加害者だとの告発もある。外部窓口があるのに、なぜわざわざ社内のタニタ総研を経由させるのか。千里氏に都合の悪い情報をそこでシャットアウトするためではないのか」と話す。
三男・昭吾氏の出版の件については「『誤認されないようお願い』といったレベルではない。書籍の売り上げが好評で増刷予定だったのに、タニタから差し止め要求が入ったため増刷が取りやめになったと、出版社、昭吾氏、一緒に監修した管理栄養士が証言している」(同内部告発者)と、主張。
長男・富士氏の助成金を巡る問題についても「助成金受給は2回に分かれている。1回目は計画書通りではないが、千里氏が同意した方法で全店舗まわって実行。2回目の計画を提出し、計画書通りにおこなう段取りをしている最中に富士氏は解任された。労働局からは、雇用者が対象の助成金であるため、雇用者がいれば不正受給には該当しない、と言われていた」(同内部告発者)と答えた。
さらに、富士氏に話を聞くと、パワハラ体質は現在も続いているという。
「正社員から業務委託に切り替え、働き方の自由度を高めるとの鳴り物入りでスタートした『日本活性化プロジェクト』でも、当初は『3年契約を更新していく』と説明していたのに、結果的に雇い止めになってしまった人も多い。その中には外部のユニオンに加盟して交渉している人もいるが、いわゆる『追い出し部屋』に送られ仕事を与えられない状態になっている。彼が当時の取締役に改善を直訴しても『社長が変わらない限り変わらない』とのことだった。その取締役も、今はタニタを去っている」と富士氏は説明する。
「パワハラをおこなっている認識はないとのことだが、われわれが把握している範囲で、21年4月以降だけでも、取締役3人、執行役員2人、部長職3人、その他10人以上がタニタを去っている。普通なら労基署から指摘を受けるくらいの異常事態だ」(富士氏)
千里氏は、前述の週刊文春の取材の際に「預貯金はたまった。この10年をかけて膿は出した」と自信を見せた。この発言を受けて、今回の取材の最後に富士氏は以下のように語った。
「預貯金をためるに至った業績の多くは父(大輔氏)の成果によるもの。千里氏が何かしら主導してやったという実績を求めて暴走する裏には、苦しんでいる多くの社員がいる。もう一度タニタの経営に携わりたい」(富士氏)
著者プロフィール・新田龍(にったりょう)
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員にまつわるトラブル解決サポート、レピュテーション改善支援を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。
著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)、「問題社員の正しい辞めさせ方」(リチェンジ)他多数。最新刊「クラウゼヴィッツの『戦争論』に学ぶビジネスの戦略」(青春出版社)
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