「フリーランス」の響きはいいけれど……驚くべき“脱法契約”の実態:働き方の「今」を知る(1/6 ページ)
「フリーランス」は、一見華やかな働き方に思える。しかし、その仕組みを悪用する企業が増加している。この記事では、悪意ある企業の手口を紹介し、フリーランスで働く人やこれからそうした働き方を検討する人がどのように身を守るべきかについて、ブラック企業を研究する新田龍氏が解説する。
新型コロナウイルス感染症は、わが国の雇用環境にも大きな影響を及ぼした。
厚生労働省が発表した最新の集計結果によると、新型コロナに起因する解雇や雇い止めは13万2000人を超え、雇用調整の可能性がある事業所も全国で13万7238カ所となっている(2022年5月20日時点)。ただこの数字はあくまで国が把握している人数にすぎず、実際の失業者数はさらに多いとみられる。
大企業も例外ではない。2021年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は84社と、2年連続で80社を超えた。このような事態は、リーマン・ショック後の09〜10年以来11年ぶり。新型コロナ感染拡大の影響を強く受けた鉄道、観光関連、アパレルのほか、製造業などを中心に、リストラ実施企業数は高い水準で推移している。
このような雇用環境激変期において、リストラや雇い止めほどは報道される機会がないものの、着実に進展しているブラックな手口が存在する。それが「フリーランス」という、一見華やかな働き方の裏に潜む、業務委託の仕組みを悪用した「脱法的労働契約」だ。
職種を問わず、年々増えるフリーランス
わが国に存在する働き方には主に、正社員として勤務先に直接雇われ、雇用期間に期限のない「正規雇用」と、派遣社員や契約社員、アルバイトのように一定の雇用期間が決まっている「非正規雇用」、そして会社や団体などに所属せず、個人で仕事を請け負う「フリーランス」という3種類がある。
このうち、フリーランスがほかの2つと決定的に違うのが「会社組織に雇われていない」ということだ。芸能人や音楽家、作家など、専門的な技術や能力が必要とされる職種が想起されやすいが、昨今この働き方はYouTuberやWebデザイナーのほか、フリーランス業務のマッチングサービスが拡充したことにより、ITエンジニアやUberEATS配達員など、さまざまな職種にも広がりを見せている。
「フリーランス実態調査結果」(内閣官房日本経済再生総合事務局)によると、日本のフリーランス人口は約462万人。さらに、フリーランス業務のマッチングサービスを手掛けるランサーズが発表した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば、21年10月時点でフリーランス人口は約1577万人となっている。
後者の数字には、正社員でありながら副業としてフリーランス業務を行っている人も参入しているが、いずれにせよフリーランスとして働く人は年々増加している状況だ。
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