『地球の歩き方 多摩』が人気! 売れたのは“たまたま”ではない理由:水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)
『地球の歩き方』が話題になっている。2020年に『東京』を出したところ大ヒット。今年の3月に『多摩』出したところ、これまた大ヒット。スマホの普及によってガイドブックは苦戦が続いている中で、なぜ人気を集めているのか。編集者に聞いたところ……。
『多摩』を出すきっかけ
それにしても、なぜ『多摩』のガイドブックを出すことになったのだろうか。「『東京』が売れた、じゃあ、次はなにを出す?」となれば、「『23区』にしよー。人口が多いし、きっと売れるよ」といった話になってもおもかしくないのに、である。
編集部の斉藤麻里さんに聞いたところ、2つの理由があるという。1つめは、『東京』がからんでいる。初の国内版『東京』は、オリンピック開催に合わせて準備していた。と同時に、20年は創刊40周年を迎えるので、記念の年に「東京はアリだな」となって、企画が決まったのだ。
しかし、ご存じの通り、新型コロナの拡大である。東京オリンピックは延期され、銀座からも、新宿からも、渋谷からも、池袋からも人が消えた。「そのような状況の中で、東京のガイドブックを出して本当にいいのか、悩みに悩みました」(斉藤さん)。ただ、創刊40周年という事実は変わらないので、出すことに。大々的なプロモーションは控えて、“ひっそり”と販売したのだ。
初速は静かなスタートだったが、しばらくして話題に。「パスポート不要のところを歩けるぞ」「コロナ禍によく出せたなあ」「次は大阪か?」といったコメントがあった中で、多摩に関するコメントが出てきたのだ。日本遺産に認定された「高尾山」が掲載されていないだけでなく、あれも載っていない、これも掲載されていない、この情報も不足しているといった具合に、批判の声が増えてきたのだ。
タイトルは『東京』とうたっているのにもかかわらず、情報の大半は「23区」のこと。ちょっと調べたところ、全464ページの中で、多摩に関する情報はわずか11ページ。割合にすると、2.37%である。多摩地域に住んでいる人からすれば「『東京』が出たのね。じゃあ、多摩エリアの情報を読んでみよう」と思って買ったのに、情報量がわずか2.37%だったので、ひとこと言いたくなったのだろう。
斉藤さんに“多摩問題”をどのように考えていたのか聞いたところ、編集部内でこのような会話があったそうだ。「『東京』を改定するときに、多摩のページを増やそうか。ただ、ちょっと増やしところで、多摩エリアに住んでいる人を満足させることができるのか」と。こうしたやりとりがあって、多摩に絞ったガイドブックを出すべきではないかという流れが生まれた。
2つめの理由は、タイミングである。話はちょっと前後するが、コロナ前であれば、「『多摩』の本を出すぞー!」とはならなかった可能性が高い。なぜか。
編集部のメンバーは12人。限られた人数の中で、年100冊ほどの本を手掛けていた。ということもあって、『多摩』の本を出すマンパワーが不足していたのだ。しかし、コロナの感染が広がって、売り上げが9割減に。人流が抑えられていた状況の中で、海外のガイドブックを出すことは難しい。自分たちの食い扶持を確保するために、なにかすることはできないか。そうした状況でもあったので、「『多摩のガイドブックを出そう』という話になりました」(斉藤さん)
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