「職務給」導入の最大のハードルは、何か?:大切なことは(1/2 ページ)
日本企業で「職務給」を導入するところが増えつつある。導入あたって、どのようなハードルがあるのか。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
本人の持つ強み(ストレングス:strengths)に基づいてケアプランを立て、実践することが重要であるとする「ストレングス・ベースド・ケア」という考え方が、高齢者ケアの分野にあります。
弱み(weakness)に焦点を当て、それを保護しようとするケアは、実は効果が限定的で、場合によっては逆効果ともなり、費用対効果もよくありません。一方、ストレングスに基づいたケアには、QOL(生活の質:Quality Of Life)や自立生活を営む力の向上が期待できることが分かってきています。強みを意識できれば意欲が湧き、できることは自分でやろうとするので過度な依存もしなくなり、その結果、能力が維持されて自立度を長く維持することができるのでしょう。
ちなみに、ストレングス・ベースド・ケア(ストレングス・モデル)を提唱した米国の研究者チャールズ・ラップ氏は、「問題より可能性を、強制ではなく選択を、病気よりむしろ健康を見るようにする」ことが重要であると述べています。
このストレングス・ベースド・ケアの考え方は、賃金制度において、日本以外の国々では主流で、日本でも導入が広がりつつある「職務給」に似ています。
「職務給」とは、どのような職務をいつまでに、どれくらいの報酬で担当するかを具体的に書面(職務記述書:ジョブ・ディスクリプション)に明記し、会社と本人が定期的に交渉・更新(あるいは終了)していく仕組みです。日本では、担当職務は会社や上司の指示で柔軟に変更されますし、正社員には雇用期間の定めがありません。また、報酬と職務は基本的に関係がない仕組みになっています。これが日本特有の「職能給」です。
職務給においては、強み(専門や得意)が極めて重要になります。本人が、その職務を全うできるといえる根拠は自分の持っている強みであり、会社がその人に任せるのは、その強みを評価したからです。強みがなければその職務を担当できませんし、強みに対する評価がその人の報酬額に反映します。「何にでも対応できるが、特に強みがない」という人よりも、明確な強みを持つ人の方が、はるかに評価が高くなります。従って、人材育成においても強みを伸ばすことに力が注がれます。強みに焦点を当てる「ストレングス・ベースド・ケア」と同じ考え方です。
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