4年間で15%→36%に カプコンの営業利益率はなぜ急上昇したのか:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(7/7 ページ)
今回取り上げるのはカプコンです。モンスターハンターやバイオハザードなどの人気ゲームを提供している企業で、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトをメインに提供しています。営業利益の推移を見ると、20年3月期は大きく伸びていて右肩上がりで成長を続けています。どうして利益率が伸びていたのでしょうか?
VRゲームの可能性は?
カプコンはバイオハザード4をVRゲームとして販売するなど、VRゲームの展開も進めています。VRゲームはコンテンツは増えてきてはいますが、個人的には普及にはまだまだ時間がかかると考えています。
現状はハードの重量が重く長時間のプレーが難しい、VR酔いがしやすいという技術面の問題もあります。当たり前ですが、ハードが普及しないと面白いソフトは増えませんし、面白いソフトが増えないとハードは普及しません。ニワトリ卵みたいな話ですが、ソフトで面白いコンテンツが増えていくというのは非常に重要です。
ですが大規模な投資をして面白いコンテンツを作る企業は、まだ増えにくいだろうと考えています。
ハード普及度合いの課題だけでなく、広告の問題もあります。近年のゲーム業界は明らかに広告の革命が起きています。
ゲーム実況動画や配信が人気で、これまでのように企業が広告費を払って広告をするという形だけでなく、ゲーム実況動画などで盛り上げてもらうというのが重要になっています。
ゲーム実況を行っている方は他社の広告費を収入源にしていたりしますから、動画で取り上げられやすい商品は、他社の広告費で自社商品の広告を出せているという状況にあって、実質的な広告予算が増えていると考えられます。
そういった中でVRコンテンツはどうなのかというと、動画で見る際にはVRでの視聴体験ではありませんので、動画にした際には良さが分かりにくいですし、VRデバイスを持っている人が少ない現状では動画コンテンツの需要も少なく盛り上がりにくい環境にいます。
広告という観点から見ても、VRコンテンツを売るには自社で負担する広告を増やす必要がありますからコストがかかります。VRデバイスが普及していないので販売が見込めにくい上に、広告費もかかると考えると、企業が本腰を上げて動くまでは時間がかかるでしょう。
好調継続
ということで、カプコンでは直近の業績は増収増益で好調となっていました。数年単位で見ると売り上げは増減がありつつも、利益は伸び続けていて利益率も上昇を続けています。
その大きな要因はデジタル化によるコスト減と過去タイトルの資産化による販売の長期化というのが後押ししています。デジタル化はまだまだ進むでしょうから、そんな中でカプコンでも利益面の好調が続くと考えています。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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