米FRB、事前予想0.5%利上げをくつがえし異例の0.75%利上げ
今回の米FRBが決定した異例の0.75%利上げ。事前予想0.5%利上げをくつがえしただけでなく、FOMC全会一致にならずの苦渋の決断だった。さらには、20年9月から始まった平均インフレ目標まで取り下げた。
米FRBは、6月15日と16日のFOMCで1994年11月以来となる0.75%と大幅な利上げを決定した。事前の市場予想やパウエル議長の6月と7月のFOMCにおける0.5%の利上げ発言をくつがえした。利上げ幅はFOMC全会一致ではなく苦渋の判断であった。
今回の0.75%利上げ決定はFOMC全会一致ではなかった
FRBの金融政策の目的は「最大の雇用」と「物価の安定」とされ、これらは「2つの責務(Dual Mandate)」と呼ばれている。パウエル議長を筆頭にFRBの理事と地区ごとの連邦準備銀行総裁で構成されるFOMC参加者による経済予測では、2022年末時点での政策金利の見通しは3.4%とし、前回(3月)の予測値である1.9%から大幅に引き上げた。
今回の大幅な利上げ決定前には、市場の予想や6月と7月のFOMCにおける、パウエル議長自身による0.5%の利上げの可能性発言があり、0.5%利上げ予想が優勢だった。加えて、FOMCの今回の決定は全会一致ではなく、カンザスシティ連銀のジョージ総裁が0.5%の利上げを支持して反対票を投じている。
FOMCのドットプロット(FOMC参加者の金利予測)によると、22年末におけるFFレート(政策金利に相当)は約3.4%、23年は3.8%と利上げ方向。その後24年に3.4%と利下げが織り込まれている。一方、市場予想は22年が約3.6%、23年が約3.2%となっており、市場予想のほうが先に利上げを済ませ、来年は利下げと見ていた。
平均インフレ目標の賞味期限は2年弱
利上げ決定直後のワシントンDCの連邦準備制度理事会が主催する研究会議にて、FRBパウエル議長は最大の雇用のためインフレ率2%回帰までとコミット。そして、このコミットメントが国際社会でのドル保有と利用促進に寄与すると発言した。
実はFRBの2%回帰を明言する前、20年9月のFOMCから「労働市場の状況が最大雇用と評価される水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで」という平均インフレ目標(FAIT Flexible average inflation targeting)を取っていた。
足元、6月10日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.6%上昇となり、最大の雇用を最優先とした平均インフレ目標が修正されることとなった。また、FOMC参加者メンバーの大半がインフレは一過性のものでないと軌道修正しており利上げを積極的に支持するというタカ派寄りになった。
関連記事
- 止まらない円安、135円台に突入 6月に入ってから8円下落
円安への動きが止まらない。6月13日朝のドル円レートは、午前10時前後に1ドル135円台まで値下がりした。円相場が135円台となったのは、2002年2月以来、約20年4カ月ぶりとなる。 - ドル円相場は円高に反発か? 為替を動かす要因を考える
急速に円高が進んだドル円相場に反発の兆しが見えている。5月24日のドル円相場は上昇し、1ドル127円前後まで円高が進んだ。4月末から5月頭には、一時131円を超える水準まで円安が進行したが、一服感も出てきた。ではこの後のドル円相場をどう見るか。 - 政府と日銀は円安進行をどう考えているのか
このところ、日本政府と日銀から為替相場に関する発言が相次いでいます。これら一連の発言は、ドル円が3月28日に、一時1ドル=125円09銭水準までドル高・円安が進行したことを受けてのものです。 - 悪いのは円安なのか
ドル円は4月11日の外国為替市場で、一時1ドル=125円77銭水準をつけ、2015年6月以来、約6年10カ月ぶりのドル高・円安レベルに達しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.