稼働率100%の部屋はなぜ生まれた? アパホテルの「宿泊客を飽きさせない工夫」:37年連続黒字の秘けつ(1/3 ページ)
2022年4月に開業したアパホテル〈なんば心斎橋東〉にて初めて採用した「とある部屋」のGW中の稼働率は100%を記録した。なぜそのような部屋が生まれたのか? そこにはアパホテルの「飽きさせない工夫」があった。
国内外でホテル事業・都市開発事業などを展開しているアパグループ。1984年に第1号店としてアパホテル〈金沢片町〉を出店して以降、ホテル事業は37年連続で黒字を計上している。新型コロナウイルス感染症の拡大で宿泊需要が減り、客室の稼働率が著しく低下したなか、なぜアパホテルは宿泊客をつなぎ止めることができたのか。
その理由の1つに「顧客満足度」がある。アパグループの元谷一志社長兼CEOは「ホテル業界は古い業界なので『客室はかくあるべし』といった伝統や格式が残っており、そうしたホテルは(コロナ禍にあっても)変わらなかった。今まではそれで良かったのかもしれないが、例えば働き方が変わったらホテルの機能も変えないといけない。宿泊客のニーズに応えて進化し続けてきたのが、アパホテルが黒字を計上できた要因だと思っている」と話す。
アパグループの元谷一志社長兼CEO。1971年4月20日福井県生まれ。石川県出身。90年石川県立金沢二水高等学校卒業。95年学習院大学経済学部経営学科卒業。住友銀行にて5年間勤務した後、99年11月アパホテル株式会社常務取締役として入社。2004年に専務取締役に就任した後、12年5月にアパグループ株式会社代表取締役社長に就任し、グループ専務取締役最高財務責任者、グローバル事業本部長を歴任。22年4月アパグループ社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、現在に至る。
開業から37年とはいえ、ホテル業界全体で見ればアパホテルはまだ新興の部類に入る。「老舗ではないからこそ、宿泊客のニーズに柔軟に対応できた。結果、それが顧客満足度向上につながった」と、元谷社長が自信を見せるアパホテルの取り組みを見ていこう。
元谷社長は、宿泊客のニーズに対応した例として、2016年10月開業のアパホテル〈広島駅前大橋〉から導入したシーリングライト(天井の照明)を挙げた。「今ではWi-Fi完備のホテルは珍しくないが、それまで宿泊客はベッドサイドの机にノートパソコンを置いて、有線接続で作業していた。ところがWi-Fiが利用できるようになると、宿泊客はベッドの上で作業するようになった。それならベッドの上で作業しやすいようにとシーリングライトを設置した」(元谷社長)
関連記事
- 花王、マスマーケティングからの脱却狙う 新部署設置1年で見えてきた「課題」とは
化粧品・日用品などに多くのブランドを擁する花王は、2021年1月に大規模な組織改編を実施、DX戦略推進センターを新設した。同センターの目的は、デジタルデータを活用したカスタマーサクセスの実現だ。顧客を成功体験に導く花王の手法、そして見えてきた課題とは? - サービス解約者の5人に1人が再登録 完全栄養食「BASE FOOD」のやめさせない仕組みづくり
完全栄養食の「BASE FOOD(ベースフード)」は、定期購入型サービスの利用者が10万人を超える人気ブランドだ。その人気を支えているのは、「BASE FOOD Labo」呼ばれるコミュニティーサイトの利用者たちだ。彼らはなぜ、BASE FOODに強い愛着を抱くのだろうか。 - トップ営業が必ず聞く「3つの質問」 6カ月間で成果ゼロの営業社員が真似した結果は?
「売れる営業」とはどういう営業を指すのか? ユーザベースでマーケティングプラットフォーム「FORCAS」のセールスを統括する田口拓也氏は「6カ月間で成果ゼロ」の新人営業を育成する中で、トップ営業が商談で必ず聞く「3つの質問」に気付いた。 - SmartHRの営業社員はなぜ成果を出し続けられるのか? トップ営業に頼らない組織運営の裏側
SmartHRの営業社員はここ3年で3倍以上に増加した。採用・育成コストが数倍になる中でも、営業組織の目標を達成し続け、営業成績は右肩上がりだという。組織規模の拡大と営業成績の達成をどのように両立させているのか? 全員が成果を出し続ける仕組みの秘けつを聞いた。 - 「ゆるい大企業」という“沈みゆく船” 優秀な若手の早期離職はもう止められないのか
2019年に「働き方改革関連法案」が施行されたことを機に日本の労働環境は大きく変わった。長時間労働は是正され、有休取得率も改善した。その一方で、残業はないものの同時に成長に必要な経験を得づらい「ゆるい大企業」から優秀な若手社員が早期離職する現象が起きているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.