「ゆるい大企業」という“沈みゆく船” 優秀な若手の早期離職はもう止められないのか:働き方改革の功罪(1/4 ページ)
2019年に「働き方改革関連法案」が施行されたことを機に日本の労働環境は大きく変わった。長時間労働は是正され、有休取得率も改善した。その一方で、残業はないものの同時に成長に必要な経験を得づらい「ゆるい大企業」から優秀な若手社員が早期離職する現象が起きているという。
誰もがあらゆる場所で活躍できる「一億総活躍社会」実現に向けたチャレンジのひとつである働き方改革。2016年に第三次安倍内閣のもとで働き方改革実現会議が発足。19年4月1日に時間外労働の罰則付き上限規制などを盛り込んだ働き方改革関連法案の施行により、日本の労働環境は大きく変わった。
過重労働で従業員を疲弊させる、いわゆる「ブラック企業」は減少傾向にある。しかしその影で、残業はないものの、同時に成長に必要な経験を得づらい「ゆるブラック企業」が増えつつあるのではないか。その結果、大企業における若手社員の早期離職率が高まり、日本の労働市場に大きな変革が起きている。
本記事では、当社が運営している就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」のデータを元に、5月に発表した「日本の働き方10年での変化『社員クチコミ白書』」から見えた、働き方改革がもたらしたことについて分析したいと思う。
「働き方改革」から得られたものは?
まず働き方改革の成果について分析してみよう。当社が発表した調査では、労働環境と社員の意識に関するこの10年間の変化を分析している。この10年間の残業時間と有休消化率の推移を見ていくと、残業時間は半減し、有休消化率はほぼ1.5倍になった。働き方改革の目的の一つである長時間労働の是正は、着実に成果をあげているといえる。
大企業を中心に働き方改革が進み、働きやすさは改善した一方で、大企業から若者が流出しているという事実がある。厚生労働省が発表している「新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内の離職率の推移」によると、従業員数1000人以上の企業に大卒で入社した新入社員の3年以内の離職率は、10年前に比べてじわじわと上昇している。働きやすさは改善されたはずなのに、大企業からの若者の早期離職が増加しているのはなぜか?
「ゆるブラック企業」という沈みゆく船
関連記事
- “納得感のない人事評価”の原因に 「目標設定のNGワード」とは?
新年度の目標設定をどうすべきか、頭を抱えている上司も多いのではないか。「そもそも組織目標が不明瞭」「組織目標と個人目標の連鎖が弱い」など中長期的に解決すべき問題も……。新年度が始まるにあたり、社員に納得してもらえる目標設定をするために使うべきではない「NGワード」を人事コンサルタントが解説する。 - 4月に「雇用調整助成金」制度がリニューアル 助成額の増額など3つの変更点を解説
コロナ禍で認知が広がった「雇用調整助成金」。コロナ禍という特殊な環境下において、失業回避への取り組みの重要性が増したため「緊急対応期間」を定め、提出書類の簡素化、申請ルールの緩和、助成額の増額などの措置を講じ、2022年4月にリニューアルした。今までどう違うのか? 3つのポイントにまとめて解説していく。 - 月400時間労働のブラック企業、平均残業4時間の超ホワイト企業に 大変革を支えた「3つの制度」とは?
2000年創業のシステム開発のゆめみ、一部の創業メンバーの当時の労働時間は月に400時間を超えていたという。離職率が20%超えの時期もあった。創業したばかりという状況はあるものの、ブラック企業と言っても過言ではない。そんな企業が改善を重ね、月165時間労働・離職率2%にまでたどり着いた。どのような取り組みがあったのだろうか? 変革の要となった3つの制度とともに振り返ってみたい。 - KDDIが「社外副業」ではなく「社内副業」を推進するワケ 経験者が感じたメリットとデメリットは?
政府は副業・兼業の普及促進を図る中で、それらの全面禁止とする企業は45%に上る。KDDIもその一つではあるものの、社内副業に積極的に取り組んでいる。その狙いとは? 経験者にメリット・デメリットを聞いたところ…… - どちらの評価が高い? ノー残業デーに残業して目標達成率120% VS 定時退社で達成率100%
働き方改革に伴い「ノー残業デー」を導入する企業が増えてきた。ノー残業デーにもかかわらず、仕事をしている社員もまだいると聞く。ノー残業デーに仕事をして目標達成率120%の社員と定時退社で達成率100%の社員はどちらより高く評価されるのだろうか? 人事評価に関する3つのポイントから解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.