高い賃料でも人気! 住居とお店が合体した「小商い物件」がじわじわ増えている理由:古い木造一戸建てが“人気物件”に(4/4 ページ)
高度経済成長期以来、長らく住まいと働く場の間には距離があった。だが、東日本大震災以降、その距離は縮まり始めており、コロナ禍を経て、一部ではぐんと近くなった。その代表的なものがリモートワークであり、街中で見かけるようになったものとしては「小商い」がある。
リスク回避のためにも小商いは有効
もうひとつ、西田氏の感想にあった「心理的安全性」という言葉もキーワードだろう。ハーバードビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンは、心理的安全性を「対人関係のリスクをとっても安全だと信じられる職場環境」と定義しており、本来は組織行動学の中で使われる言葉だ。だが、これを広く人生全般に向けて考えたらどうだろう。
簡単に言えば、複数の世界を持ち、そのひとつの本業とは違う世界に信頼やつながりを感じられれば、心理的安全性は満たされるのではないかという考え方である。
ひとつの世界しか知らない・持っていなければそこに全てを求めるが、複数の世界があればいずれかで安心できれば良い。そして、前述の見えない価値が交換されている世界はそれにふさわしいのではないか。
心理的だけでなく、経済的にも同じことがいえる。ひとつの財布しか持っていないより、小さくても複数の財布があれば経済的変化に耐えやすくなる。ましてや社会が大きく変動するかもしれないこれからの時代には、そうした備えは必要かもしれない。
近年の小商い人気の背景からは、さまざまなものが読み取れるというのである。
著者プロフィール
中川寛子(なかがわ ひろこ/東京情報堂代表)
住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。路線価図で街歩き主宰。
40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
主な著書に「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版社)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
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