スシローは「おとり広告」問題の本質を理解しているか おわび文書に“違和感”を覚えたワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
「スシロー」のおとり広告問題。筆者はスシロー運営会社の体質が、今回の問題と大きく影響しているのではないかと分析する。どういうことかというと……。
回転寿司最大手「スシロー」を経営する、あきんどスシロー(大阪府吹田市)は6月9日、消費者庁から「おとり広告」に該当する景品表示法違反が認められたとして、措置命令を受けた。
例えば、高級品である「うに」が110円(黄色い100円皿)の超低価格で提供されるとあって、顧客たちが喜んでスシローに乗り込んだら品切れだった。そして、肩透かしを食らった人々の怒りが爆発。「テレビの華々しいCMは何だったのか」とクレームの嵐に。消費者庁としても見過ごすことができなかった。
おとり広告とは、「商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示」で、景品表示法の不当表示として規定している。
スシローでは、販売数が足りなくて売り切れるリスクを懸念してか、キャンペーン商品などに「売り切れ御免」と表示するケースがある。しかし、消費者庁では「売れ切れ御免は、なくなっていたら許してくれという意味ではない。早く注文しないとなくなってしまうと煽る文言だ」としている。売り切れ御免は販売促進にしか働かないというのが、消費者庁の見解だ。
スシローの店は同業他社の店と比べても、普段から商品を切らしていることが多い印象がある。つい先日も、とある店では午後3時に「生うに」と「鶏せせり唐揚げ」が切れていた。できればディナー時間が始まる午後7時頃までは持たせてほしかった。
早々と完売したタピオカ
さかのぼると、2019年7月のタピオカブーム最盛期に、スシローで販売した「光るゴールデンタピオカミルクティー」が売れ過ぎて早々と完売。生産体制を立て直して8月中旬以降に再開するまで、品切れ中の状態が続いたことがあった。この商品は約3カ月で175万杯も売れた。
その頃、スシローのスイーツ企画は神がかっていて、16年11月に発売した「ベリーファンシー監修 苺のふわとろパンケーキ」、17年11月に発売した「グラニースミス監修 アップルパイ」なども飛ぶように売れていた。食べに行ったら、品切れを起こしていた、終売していたという経験がある人も多いだろう。
このような経験から、スシローの社内には「売れ過ぎて品切れを起こすのは商品力が強い証拠。再開しても、また売れる」といった共通の認識、人知を超えた売り切れ御免を目指す企業文化が形成されてきたように見える。
平素から品切れが多いから、担当者は大々的に宣伝しているキャンペーン商品が切れていても、「売り切れ御免だからごめんなさい」として、特に大きな問題とは思わなかったのではないだろうか。
おとり広告について、スシロー側に悪意はなかったのかもしれない。キャンペーン商品で品切れを起こしても当たり前と感じる一種の鈍感力、または社内の共通感覚があったと考えられる。
違反行為は、前社長の堀江陽氏(現・京樽社長)管掌下の21年9〜12月に起きている。現在の新居耕平社長は、今年4月1日に就任したばかりだ。この人事と、おとり広告が関係していたと見る向きもある。
消費者庁によれば、「おとり広告の事例はわりと多い」という。あってはならないことには違いないが、特に不動産のネット広告で多く見られる。実際は成約している格安物件を広告に出しておいて、それを目当てに顧客が来店したら別の物件を勧めるといった違反例が一般的だ。今は消滅へと向かっているが、不動産業界の一種の慣例だった。
スシローにおいては実際は売っていない、うに、かにといった超目玉商品をテレビやネットで宣伝。来店した顧客には、切らしているから仕方ないと別の商品を食べてもらっていた。
顧客を存在しない商品で釣るおとり広告は、どうして無くならないのだろうか。
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