スシローは「おとり広告」問題の本質を理解しているか おわび文書に“違和感”を覚えたワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
「スシロー」のおとり広告問題。筆者はスシロー運営会社の体質が、今回の問題と大きく影響しているのではないかと分析する。どういうことかというと……。
おとり広告と認定された3品
スシローが「おとり広告」を行ったと認定されたのは、次の3品だ。
1つ目は、21年9月8〜20日に実施したキャンペーン「世界のうまいもん祭」で提供した19品のうちの「新物!濃厚うに包み」(110円)。
通常、スシローに行くと、うに(生うに)は330円の黒い皿で提供されている。それが3分の1である、黄色い皿で110円という特価で販売されるのだから、わざわざ遠いところから家族総出で繰り出したケースもあっただろう。
店に到着して、「うには売り切れていました」と店員に言われた時の“がっかり感”はとても大きいものだったと想像される。筆者自身は、うににそこまでの執着はない。スシローは旬のネタをそろえたフェアー商品が豊富なので、他に面白い商品があればそれを食べようと切り替える。しかし、全員がそう割り切れるわけではない。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
2つ目は、同年9月8日〜10月3日のキャンペーン商品、「匠の一皿 独創/とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」(528円)。こちらも、うにである。
3つ目は、同年11月26日〜12月12日に実施したキャンペーン「冬の大感謝祭 冬のうまいもん」で提供した9品のうち「冬の味覚!豪華かにづくし」(858円)。
6月17日、同社の親会社であるFOOD&LIFE COMPANIESは「一部報道に関するお知らせ」というニュースレターを発行した。そこには、「報道の中で『詐欺』という表現や『過去からも意図的に繰り返し行ってきたのでは?』とご指摘をいただくことに、従業員一同大変心を痛めている一方で、今回の件の事の重大さを改めて痛感し、猛省しております」と書かれてあった。
また、「現在も、大変多くのお客様からお問い合わせや、がんばれといった応援のご連絡をいただいており、この度交付された措置命令の重大さを改めて実感しております」ともあった。
総じて文面から伝わるのは次のようなことだ。社内では、売り切れ御免の態度に対して、一般のユーザーの反応は温かくて励みになる。一方、報道は冷たくて傷つくものだと受け止めている。報道は消費者庁の発表をもとに、時には被害を受けた消費者の声を代弁するために、法的措置について取り上げるので、スシローから見れば言い過ぎと思われる厳しい表現になりがちだ。
報道がおとり広告について厳しく取り上げた後も、スシローの店舗は相変わらずにぎわっているようだ。ニュースレターからは顧客から支持されているという自信も垣間見られる。うにやかににさほどの思い入れのないユーザーにすれば、スシローは依然、安価で満足度の高い寿司を提供してくれるチェーンだ。私の知人にも「スシローは最近、混み過ぎていた。人気が落ちて空いているなら行ってみたい」と言っている人もいたほどだ。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 290円ラーメンに250円定食 びっくりドンキー、幸楽苑、なか卯で進む「朝食革命」の正体
朝食に力を入れる外食チェーンや飲食店の動きが目立ってきた。ハンバーグ専門店「びっくりドンキー」、タピオカや台湾料理の専門店「春水堂」などが参入している。どのような戦略を打ち出しているのか。 - 「高級食パン」ブームは本当に終了したのか? “大量閉店”騒動が隠した本当の姿
「高級食パンのブームが去った」という報道が目立つ。SNSでは“大量閉店”の情報が飛び交う。最新の「高級食パン勢力図」から見えてきたものとは? - 「買うのが恥ずかしい」けど売れている ドンキ、6種類の新型ボクサーパンツ開発の背景
ドン・キホーテが3月に発売したボクサーパンツが好調だ。男性特有の細かい悩みや不安に対応するのが目的。全6種類を開発した背景は?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.