「インターンシップ」小手先のルール見直し アンフェアな就活モード“押しつけ”の現状:教育プロセス全体の見直しを(4/4 ページ)
インターンシップを通して取得した学生情報を企業が広報・採用選考活動に活用することを可能にする政府のルール見直し。しかし、そもそもインターンシップは学生にとって仕事選びに有効な場になっているのだろうか。
また、学生と社会人とでは求められる“解”の性質が全く異なることも学んでおく必要があります。今の学校教育はあらかじめ決められた正解を子どもたちに教え覚え込ませることが基本です。どれだけたくさんの正解を習得したかを確認するために、学校は問題を作り、テストし、正解の数が多い者を評価します。
もちろん、学校が正解として教える知識は、先人たちが残してきた偉大な業績や知恵の結晶であり、それらを習得することはとても大切なことです。しかし、社会に出て、国家及び社会を形成する運営当事者として仕事に従事するようになると、あらかじめ決められた正解など存在しません。そのため、学校で習得してきた正解を追い求めるスタンスのまま社会に出ると、戸惑うことになります。これは、学校教育で培われた能力と社会で求められる能力との間にある、とても大きなギャップです。
企業と学生のアンフェアな情報格差の解消を
社会に出てからは、目的や目標を達成するためにどうすればよいかという問題を自ら立て、その問いに対する解を自分なりに導き出して実行することが求められます。そして、その場の状況ごとに異なる最適解を導き出さなければなりません。今日の最適解が明日の最適解だとは限らず、都度何が最適かを問い直す必要があります。あらかじめ決められた正解がないとはそういうことです。
就職活動のSTEP1〜3にも、あらかじめ決められた正解などありません。あるのは、就活する学生それぞれの最適解です。また会社側も学生を採用する際に、選考におけるその会社にとっての最適解を総合的に判断しています。しかし、解の性質が違うことを認識せず、今の学校教育の延長線上で就職活動の中に正解を追い求めてしまうと、学生の中に戸惑いが生じるのは当然です。
就活ルールやインターンシップの考え方を見直すことも重要ですが、それらは学生時代の総仕上げに相当する最後の一時期に限定した施策に過ぎません。子どもたちはそれまでに少なくとも、小学校6年、中学校3年の計9年の義務教育期間を経ています。幼稚園や高校なども合わせると、教育を受ける期間はさらに長くなります。
学生を「国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた」状態で社会に送り出すには、学生自身が納得して最適な仕事選びができるよう育成するまでが学校の役割であり、そのためには就活時期直前だけでなく、幼少期からの学校教育全体を見直す必要があるように思います。学生が社会に出る際、会社側には学生を選ぶノウハウがあるのに、学生側には会社を選ぶノウハウが備わっていないという現状はフェアではありません。
これまで学生は、学生自身が無理やりモードを切り替え、就職支援部門にサポートしてもらいながらなんとか就活を乗り越えてきました。しかしそれは、就活時期を迎えた学生に無理なモードチェンジを強いることで、学校教育を含む社会システムの不備の尻拭いをずっとさせ続けてきたということなのではないでしょうか。
著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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