「インターンシップ」小手先のルール見直し アンフェアな就活モード“押しつけ”の現状:教育プロセス全体の見直しを(3/4 ページ)
インターンシップを通して取得した学生情報を企業が広報・採用選考活動に活用することを可能にする政府のルール見直し。しかし、そもそもインターンシップは学生にとって仕事選びに有効な場になっているのだろうか。
もちろん、天職と言えるような仕事に巡り合うこと自体は簡単なことではありません。しかし、就職期間が6カ月程度の第二新卒であったとしても、社会に出てある程度実務を経験してから行う転職活動と、新卒で取り組む就職活動とでは雲泥の差があります。
転職活動の場合も、先ほど挙げたSTEP1〜3の手順自体は同じです。しかし、新卒の時よりはずっと、自分なりのイメージを持って進めることができます。実際に働いた経験があると、職場で自分に何が求められるのか、それに対して自分は何ができて何ができないのかを身をもって知り、また自社や取引先、同業者などのさまざまな情報も蓄積されるため、自分なりの判断軸が生まれるからです。
就職活動が人生を左右するほど大きなイベントであることは、新卒時の就職活動でも、一度社会に出た後の転職活動でも同じです。むしろ、年功序列で新卒から定年まで一社で勤め上げる風土が残る日本の会社においては、新卒時の方が人生を左右する影響度はより大きいと言えるかもしれません。
それなのに学生が就職活動する際には、自分なりの判断軸があやふやで準備が整わないまま取り組まなくてはならないのです。もし、学生が少しでも転職活動時に近い準備を整えたいならば、実務経験と遜色ないほどのインターンシップが必要です。しかし、たった5日や2週間では、少し仕事を覚え始めたころにインターンシップは終了してしまうため、そのような経験を積むことができません。
就活へ無理なモードチェンジ強いる現行の学校教育
教育基本法の第一条には、「教育の目的」として以下のように記されています。
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」
教育基本法にある「平和で民主的な国家及び社会の形成者」とは、国家及び社会を運営する当事者のことです。しかし、準備が整わないまま就職活動時期を迎える学生たちは、社会を運営する当事者としてのイメージを描ききれないまま、突然就活モードへの切り替えを余儀なくされて面食らい、強いストレスを感じることになります。
総務省の労働力調査によると、2021年の就業者数の89.6%は会社などに勤めている雇用者です。将来大半の学生が就職活動を経験することが分かっているのですから、学校教育の早い段階から少しずつでも就活で使える知識を学んでおけば、学生が就職活動時期を迎える際に感じるストレスを緩和できるはずです。
例えば、就職活動のSTEP1では会社や職種についての具体的な知識が必要になりますが、これらの知識は授業の中で業界ごとにどんな会社があるのか調べたり、会社勤めしている近所の大人を講師に招いたりするだけでもある程度習得は可能です。
世の中には、広告などで見聞きしている有名企業以外にも、世界をリードする技術を持つ中小企業や成長著しいベンチャー企業などがたくさんあります。また、営業や経理、人事、総務などそれぞれの職種には、それぞれのやりがいや大変さがあります。学校教育の早い段階からそれらの実情を少しずつでも学ぶ機会があれば、就活までにかなりの予備知識を備えることができます。
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