「Web3.0はうちじゃ無理なの?」 日本企業の多くが頭を抱えている“超現実的”な理由:ネックはどこに?(1/4 ページ)
「NFT」「ブロックチェーン」「メタバース」といったWeb3.0関連のテーマ。これらは、自社のビジネスモデルに大きな影響を与える可能性があるが、うまく取り組めない日本企業も多い。その理由は?
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
もはや耳にしない日はないのではないかというほどのバズワードとなっている「NFT」「ブロックチェーン」「メタバース」。これらはWeb3.0関連のテーマです。現状約50兆円の市場が、2024年には90兆円市場へ拡大するという予測も出ています。
6月7日、岸田政権が発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」。ここでも、Web3.0領域にて下記4点が示されていることから、官民両面からの市場拡大が見込まれます。
(1)インターネットにおける新たな信頼の枠組みの構築
(2)ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)の利用等の Web3.0の推進に向けた環境整備
(3)メタバースも含めたコンテンツの利用拡大(著作権の利用許諾を簡素で一元的な処理で実現)
(4)Fintechの推進(事業者のセキュリティトークンでの資金調達機会を拡大)
Web3.0市場は果たしてこれからどのような発展を遂げていくのでしょうか。そして、今後の発展の鍵を握ることは何なのか。
Web3.0を中心にビジネスを展開する企業の視点では、書籍をはじめさまざまな見解や情報が世の中にはあふれています。しかし、その技術や提案を受け、実際にビジネスを展開していく企業側の視点に立った議論は、日本において不足しているようです。
今回はその企業側の視点を中心にお伝えしていきたいと思います。
プレーヤーは群雄割拠
Web3.0領域はFacebookを展開するMetaなどの巨大IT企業から、ベンチャーまでさまざまなプレーヤーが群雄割拠しています。これは、DXのマーケットにおいてプラットフォーマー、コンサル、IT開発ベンダー、SaaSベンチャーなどが乱立しているのと似たような様相となってきています。
このように、企業をテクノロジーで支援する人たちの知見やノウハウは日々蓄積されています。では、ITではなく、小売、製造、サービス、不動産、外食、宿泊、教育、医療・福祉などの産業ではどうでしょうか。現時点では大手企業の一部イノベーター(革新者)とアーリーアダプター(初期採用層)が着手しているのみで、やっとこれから大手企業のアーリーマジョリティー(前期追随者)が展開をしていくタイミングを迎えています。
実際にコンサルティングの現場でも、大手企業のワークショップが増えています。ただ、アイディエーション(さまざまな案を出していくこと)から入るケースが多く、暗中模索の段階というのが実情です。
暗号資産(仮想通貨)のイメージが根強くある企業には、Web3.0が投機対象と感じられてしまい、足踏みをしている状況です。投機ターゲットではなく、一般ユーザーを巻き込んでいくという考え方を基本としなくてはなりません。
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