なぜ女子の半分が泳いでないの? ジェンダーレス水着の開発者が語った“忘れられない光景”:本当に届けたい人たち(4/4 ページ)
フットマークのジェンダーレス水着が話題になっている。性の悩みだけでなく、さまざまな理由で「肌を隠したい」生徒のニーズに対応するのが狙い。開発者にその背景を聞いた。
進む制服のジェンダーレス化
制服のジェンダーレス化については、制服メーカーが対応を進めている。例えば、大手のトンボ(岡山市)では公式Webサイトで「ジェンダーレス制服」について詳しく解説している。性差を感じさせないデザインを採用したり、「ジャケット」「ボトム」「ネクタイ・リボン」の組み合わせを選べたりするようにしているのが特徴だ。また、生徒、保護者、教師にLGBTQへの理解を深めるために、同社のLGBTQアドバイザーによる講演会も実施している。
販売店からも3〜4年前から、「ジェンダーレスに対応した水着を探している」「体型を気にしている生徒のための水着はないか」といった声が寄せられるようになった。
こうしたことが重なり、同社では新型水着の開発に着手した。
プール授業を休む女子
佐野氏が「プールの授業が嫌だ」という女子の気持ちを強く印象付けられた出来事もあった。
数年前、ある中学校で、プールの授業を視察した際、女子の半分近くが見学していた。見学している全員が体調不良(生理など)というわけではなく、その多くが「男子に肌を見せたくない」「異性の目線が気になる」と考えていた。授業を受け持っていた教師は「今はいろいろな考えの生徒がいる。本当はなるべくプールの授業に参加してほしいが、強制はできない」と語っていたという。
学校の授業で泳ぎ方を習う理由の一つは、水難事故を避けることだとされている。そのためには、少なくとも水に慣れてもらう必要がある。生徒が水泳の授業に参加したがらない状況を、新型水着で改善したいというのが佐野氏の願いだ。
新型水着が想定しているのはジェンダーレス対応だけではない。「肌の疾患が気になる」「手術跡を見せたくない」「日焼けしたくない」といった悩みの解消も狙っている。
佐野氏は「本当はジェンダーレス水着といいたくない」と力説する。この点ばかりが注目されると、新型水着を着用している生徒が、「性の悩みを抱えているのでは?」と見られてしまう可能性があるからだ。あくまで、さまざまな事情に応じて選んでもらえる水着として認識してもらうのが目的なので、商品名を「男女共用セパレーツ水着」としたという。
現在、新型水着は一部の学校で試験的に利用してもらっている段階だ。22年度は学校に向けて存在をアピールし、23年度以降に本格的な展開を考えている。一般販売も23年以降を予定している。
授業で使用する水着を学校が指定するケースもあるが、現在は「紺色などの落ち着いた色で、華美でなければOK」程度の目安を示すのが主流だという。学校が指定する条件を満たした水着は、学校の体育館や地元の小売り店で販売される。フットマークの新型水着は、こうした場所に並べてもらい、生徒の選択肢の一つとして定着するのが目的だ。
性の悩みだけでなく、さまざまな生徒のニーズに対応した新型水着は支持を得られるか。
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