なぜ“交通系の話”はあまり出てこないのか 「参院選 2022」の公約イッキ見:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
参議院選挙が始まった。125議席に対して545人が立候補し、公示は6月22日、投開票は7月10日。赤字ローカル線廃止、新幹線建設、鉄道事業者経営危機、モーダルシフトなど、鉄道のみならず交通分野は問題山積だ。545人の立候補者のうち、何人が交通問題を公約に明記しているか。
「交通問題」選挙区は42人、比例区は7人が言及
候補者のみなさん、政策は静的な公式サイトに、分かりやすく箇条書きで示したほうがいいですよ。政党の公約や政策のリンクを貼った候補者も散見されたけれど、有権者は候補者の考えを知りたいはず。インターネットで投票できる時代になれば考えも変わるでしょうけどね……というわけで、実際に閲覧できた約300人の公式サイトを調べた。
選挙期間中のため公平性を配慮し、候補者名や政党は書かずに話を進める。約300人の公式サイトに交通問題を挙げた候補者は選挙区で42人、比例区で7人。候補者の1割に満たなかった。もっとも、ほかの候補者が交通問題をないがしろにしているわけではなかろう。観光政策、地域活性化、中小企業支援を挙げた候補者も多く、きっとそのなかに交通問題や交通事業者支援もあることだろう。しかし、明記しているか否かに大きな違いがある。
北海道と香川県は交通問題に関心の高い候補者が多い。第2青函トンネル、交通ネットワークの整備、交通事業者支援、四国新幹線の実現など、どちらも道県内のJRの赤字が深刻である。東京も交通問題を挙げる候補者が目立つ。人口集中や都市計画に関わってくるからだ。近畿圏はリニア中央新幹線、北陸新幹線の期待が高まる。
リニア中央新幹線問題の静岡県と、九州新幹線西九州ルート問題の佐賀県に、政策で言及する候補者はなし。ネットワークの整備や環境問題に含まれるかもしれない。デリケートな問題に触りたくないようだ。大分県と宮崎県も東九州新幹線には言及しない。
このほかに交通問題に言及した各候補者も、政策の順位としては下位。日頃、鉄道関係のニュースを追っていると、新線計画、新幹線、ローカル線や駅の存廃などが地域振興のテーマになっている。しかしニュースの当事者たちの熱量が候補者に届いていないようだ。
トラックドライバー出身の候補者が政策を自動車輸送、物流に絞っていた。これは明確で分かりやすい。しかし万人受けしないテーマかもしれない。
「我田引水」になぞらえた「我田引鉄」も昔話になってしまった。
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