「KDDIの会見、やらなくてよかったんじゃね」問題 どう考えるべきか:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
KDDIの大規模な通信障害を受けて、興味深い問題が持ち上がっている。原因がよく分かっていない状況の中で、「会見を開く必要はあったのか」という指摘がある一方で、「早ければ早いに越したことはない」という意見もある。果たして、どちらが“正しい”対応なのだろうか。
最大の関心事は何か
では、今回のような通信障害が起きたとき、通信業界としては何が最大の関心事になるのかというと、「なぜこんなことが起きてしまったのか」という原因だ。技術や機器のトラブルが原因だとしたら、それは自分たちの仕事にも関わってくるので、まずはそこが明確になる情報がほしい、というニーズが高まる。
そうなると、業界メディアや専門性の高いジャーナリストが企業側に求めるのは、一刻も早く事態を収拾して、原因を特定してもらうことになるのは言うまでもない。つまり、この業界で通信障害が発生しても、すぐに会見を開かないことが「暗黙のルール」になっていたのは、これが「通信ムラ」の利害に関わっている重要なイシューだからなのだ。
だから、業界メディアや専門性の高いジャーナリストは今回の会見にイラっとしている。長い時間座って待っても、彼らを納得させるような原因の話はちっとも出てこない。一般人は、高橋社長が技術をしっかりと把握して説明をしたことを称賛しているが、業界メディアや専門ジャーナリストからすれば、そういう基本的な知識は既に持ち合わせているので、特に目新しい話はない。つまり、彼らにとって、原因が特定できていない段階の社長会見など「時間のムダ」なのだ。
一方、SNSやネットの声に代表される、一般ユーザーたちを見ていると、KDDIの会見に「原因」をそれほど求めていないのは明白だ。分かりやすいのは、「産経新聞」が運営する「イザ!」の『KDDI社長謝罪会見に「逆に信頼できそう」「安心した」の声も…不通続きで困惑するユーザーも多数』(7月4日)の中で紹介された声だ。(参照リンク)
「こういう苦しい時の説明や対応で信頼が変わりますね トップが迅速かつ有能な事を確認できて、逆に信用できそうです」
「auユーザーとして困ったのは事実だけどちゃんと原因からなにから事細かに説明してるとこ見て安心した」
「KDDI社長の記者会見を見て戦々恐々な社長たち多いのでは。現場上がりの社長の強さは信頼性に繋がると再認識」
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