「KDDIの会見、やらなくてよかったんじゃね」問題 どう考えるべきか:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
KDDIの大規模な通信障害を受けて、興味深い問題が持ち上がっている。原因がよく分かっていない状況の中で、「会見を開く必要はあったのか」という指摘がある一方で、「早ければ早いに越したことはない」という意見もある。果たして、どちらが“正しい”対応なのだろうか。
「安心を伝える」ことが大事
お分かりだろう。このような人々が注目しているのは、この会見によって、KDDIという会社の「イメージ」がどうなったのかということだ。
高橋社長が会見で語った「情報」より、高橋社長があの場で見せた「ムード」によって、KDDIという会社にジャッジを下している。付け焼き刃的な感じではなく、知識があるのかという雰囲気、にじみ出る人柄や誠実さを見て、「信用できそう」「安心した」「信頼性に繋がると再認識」と判断を下している。
つまり、一般のユーザーは、ルーターがどんな風に不具合を起こして、どんな技術的なロジックで通信障害がなかなか復旧しないのかという「原因」より、「全力で取り組んでいるのか」「悪いと思って反省しているのか」という感じで、KDDIがこの問題に対してどう向き合っているのかという「企業の姿勢」に関心があるのだ。
このような人たちの「立場」に基づけば、原因が特定できていない段階の社長会見も「やるのが当たり前」「早いにこしたことはない」というのが正しい結論になる。業界メディアや専門ジャーナリストの皆さんとは、目に映っている「世界」がハナから違うのだ。
さて、このようにそれぞれの「立場」を理解すれば、「原因分かってからやれ」「早いにこしたことない」という双方の言い分を、こっちが正しくて、こっちが間違っている、と単純に割り切れるものではないことが分かっていただけただろう。
では、企業の危機管理的にはどちらが適切だったのか。こちらも「これが正解」とスバッと言い切れるような話ではないが、もし筆者がKDDIの危機管理に関わっていたら、やはり「社長会見」をお勧めしただろう。問題が長期化する兆しが見えた段階で、業界の「原因が分かるまで会見しない」というルールは無視すべきだと。
実は多くの人が誤解をしているが、企業危機管理的には、この手のアクシンデントが起きたときにやる会見は「正確な情報を伝える」という目的でやっているのではない。「安心を伝える」ことが実は主な目的だ。
情報が錯綜(さくそう)して、ユーザーや社会が不安に陥ってパニックになりかけているとき、「私たちはちゃんとこの問題に取り組んでいますよ」という企業のスタンスを世に示して混乱を収めていく。それは、部長レベルや役員では残念ながら力不足であって、トップが出てきて言うからこそ「効果」がある。
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