「KDDIの会見、やらなくてよかったんじゃね」問題 どう考えるべきか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
KDDIの大規模な通信障害を受けて、興味深い問題が持ち上がっている。原因がよく分かっていない状況の中で、「会見を開く必要はあったのか」という指摘がある一方で、「早ければ早いに越したことはない」という意見もある。果たして、どちらが“正しい”対応なのだろうか。
企業のトップから聞きたいセリフ
「社長が会見したり、その準備で時間がとられたら事態の収拾が遅くなる」などの反論があるの重々承知だが、極端な話、事態収拾のための陣頭指揮は社長じゃなくてもできる。そのために大企業は平時から危機管理の体制を構築しているはずなのだ。
しかし、「KDDIの顔」として日本社会全体に混乱を引き起こしたことへの謝罪と復旧や賠償という企業の姿勢を示すことは、社長以外にはできない。担当役員の言葉と、社長の言葉では重みがまったく違う。まさに「余人を持って代え難い仕事」なのだ。
「安心を伝える」ことが目的なので、「原因」はクリアになっていなくてもいい。「まだ分かっていませんが、原因を特定するために全社をあげて調査中です」とか「本日中にはまだ特定できない見込みですが、また状況が変わり次第、皆さんにお伝えします」とアナウンスをするだけでも、一般ユーザーの不安はそれなりに解消される。
「原因」に価値がある業界メディアや専門ジャーナリストにとっては、なんの意味もない言葉の羅列でしかない「ノイズ」だが、先の見えない不安に襲われている人々からすれば、「企業トップから聞きたいセリフ」なのだ。
「今回は高橋社長がうまかったが、普通の社長だったら、話せることもないのに会見を催したらマスコミからボコボコに吊(つる)し上げられておしまいだ」という意見もあろうが、筆者の経験では、そういう発想で会見を先延ばしにした企業のほうが最終的に、ボコボコに叩かれることが多い。
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