アジアBNPL大手のAtome、日本上陸 オフライン決済にも注力:金融ディスラプション
アジアで2700万以上のユーザーを持つ後払い(BNPL)決済サービス、Atome(アトミ)が7月6日、国内でサービスを開始した。Atomeは、2017年創業。19年にシンガポールでBNPLサービスを開始し、インドネシア、マレーシア、香港、台湾、ベトナム、フィリピン、タイ、中国本土などでサービスを提供している。日本が10番目のマーケットだ。
アジアで2700万以上のユーザーを持つ後払い(BNPL)決済サービス、Atome(アトミ)が7月6日、国内でサービスを開始した。Atomeは、2017年創業。19年にシンガポールでBNPLサービスを開始し、インドネシア、マレーシア、香港、台湾、ベトナム、フィリピン、タイ、中国本土などでサービスを提供している。日本が10番目のマーケットだ。
Atomeは3回分割、手数料なしという、海外で一般的なBNPLの方式を取る。国内のBNPLはECサイトなどオンラインでの決済の1手段として提供される例が多いが、Atomeはオンラインだけでなくオフラインの決済にも注力する。
QRコード読み込みで分割払い
店舗に掲示されたQRコードをアプリで読み取り、決済と分割払いが可能。基本が分割払いのQRコード決済だと考えると近い。
国内のBNPLサービスと異なるのは、代金の支払い方法としてATM払いやコンビニ店頭払いのほか、クレジットカード決済、デビットカード決済、銀行口座引き落としなどにも対応することだ。国内法人の代表を務める依田寛史氏は「柔軟な決済手段に対応する。また決済回数もできる限り柔軟な対応をしていきたい」と話す。
現時点の3回分割は、初回決済時に3分の1、1カ月後、2カ月後に残り3分の1ずつを支払う形。2カ月以内に精算が終わるため、割賦販売法の適用外という認識だ。利用は、アプリダウンロード後、電話番号を使った認証を行うだけ。1分程度で利用できるようになり、本人確認(KYC)や信用情報機関への照会も行わない。今後、分割回数を増加させる際には、必要なライセンスを申請していく考えだという。
もう1つの特徴が、クロスボーダー決済だ。東南アジアを中心としたAtomeユーザーが来日した際に、現地通貨のまま決済が可能。また、日本の加盟店がアジア向けにECなどで販売する際にも、現地通貨で決済できる。
Atomeで決済されると、一括即時に加盟店にAtomeから売上金が振り込まれる。クレジットカードなどで一般的な、不正利用などの際にあとから売り上げを取り消されるチャージバックもなく、与信リスクはAtomeが負う。
またインフルエンサーを使ったマーケティングなどに力を入れており、単なる決済手段としてだけでなく、店舗の販促にも活用できることを強みとしてうたう。Atomeのデビット・チェンCEOによると「Atome導入によって、購入単価が30%向上、送客効果によって25%客数が向上、85%ものBNPLリピート率がある」という。
現時点では、オンライン、オフラインともに加盟店はわずかで、これから開拓を進める。国内でもBNPL市場が活況となる中、外資の参入はどのような効果をもたらすだろうか。
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