週3日や時短勤務に「後ろめたさ」を感じる理由 柔軟な働き方を実現するヒントとは?:ワークスタイル4.0へ(4/4 ページ)
働き方のニーズが多様化し、週3日勤務や時短勤務などのワークスタイルが生まれている。にもかかわらず、柔軟な働き方に「後ろめたさ」を抱いてしまうのはなぜなのか。
しかし、事前に決めた契約内容に沿って働き、求められている成果をしっかりと出せているのであれば、勤務時間の長さや勤務日数の多さ、休業期間の長さは必ずしも重要ではないはずです。ダンサーとしても活動する働き手が週3日しか出勤しなかったとしても、その条件を会社が了承し業務体制を整え、社員が求められている成果を出せているならば、会社は計画通りに業績を積み上げていくことができるからです。
ワークスタイル4.0の時代へ
冒頭でご紹介したように、かつて抗うことが許されなかった転勤に配慮を求める社員は増え、実際に東京海上日動火災保険やJTBなど本人が望まない転勤を撤廃する方針の会社もあります。また、転勤など勤務地以外にも職務や勤務期間、勤務時間・日数、給与、副業の可否、在宅勤務およびテレワークの可否など、働き手の希望条件は多様です。
一方で会社側の考え方もさまざまあります。在宅勤務一つとっても、テスラCEOのイーロン・マスク氏をはじめ否定的な経営者は少なくありません。ホンダは原則出社の方針を打ち出しました。それに対し、NTTは在宅勤務などのテレワークを原則とする方針です。それらはどちらが正しいと一概に言えるものではありませんが、職場が決めた働き方に働き手が合わせるしかないのと、働き手に選択肢があるのとでは意味が大きく異なってきます。
働き方の原則が正社員一択だったワークスタイル1.0の時代には、職場の都合に合わせる自己犠牲の精神が尊重され、働き手の希望はワガママと受け取られました。しかし、2.0、3.0と時代が変遷していく中で働き方の選択肢は広がり、一方で個々の志向性や個々の背景に配慮するダイバーシティ&インクルージョンの考え方が尊重される機運は高まってきています。これまでワガママと見なされてきた勤務条件の希望は、あらゆる働き手が気持ちよく働き、仕事で最大の能力を発揮するための最適条件へと意味を変えつつあるのです。
働き方の希望条件を細かく組み合わせると、最適条件は働き手の数に等しくなります。しかし、正社員というオールマイティな働き方のみを主とする考え方が残っている限り、柔軟な働き方はいつまでも正統と見なされず、“仕方ない理由”という免罪符がないと選択しづらいままです。それが、ワークスタイル3.0の限界だと言えます。
ワークスタイル4.0では、正社員を主、それ以外を副とするような原始的な括りから解放され、働き手が個々に最適条件を設定し、職場が決めた働き方に働き手が合わせるという一方的な関係性ではなく、働き手と職場がお互いの希望条件をすり合わせて契約を交わす双方向の関係性をベースとした、個別最適の時代になるのだと思います。
そんな個別最適の働き方を提供できる会社が、最も優れたエンプロイメンタビリティ(employmentability:会社の雇用能力)を有する雇い主として働き手から選ばれ、社会をリードしていくことになるのではないでしょうか。
著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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