週3日や時短勤務に「後ろめたさ」を感じる理由 柔軟な働き方を実現するヒントとは?:ワークスタイル4.0へ(3/4 ページ)
働き方のニーズが多様化し、週3日勤務や時短勤務などのワークスタイルが生まれている。にもかかわらず、柔軟な働き方に「後ろめたさ」を抱いてしまうのはなぜなのか。
本来、柔軟な働き方を希望する理由は人それぞれです。夢を持ってダンサーとして活動しながら会社でも働き続けようと週3日程度の勤務を望むような場合もあれば、ゆっくりと1年かけて海外旅行を楽しみたいから長期間休業したいという場合などもあるはずです。しかし、これらは一般的に“仕方ない理由”とは見なされません。
柔軟な働き方に「後ろめたさ」を感じてしまうワケ
同じ週3日勤務や長期間休業であっても、“仕方ない理由”があるかどうかで認められるか否かが決まるというのは、他の働き手の感情や業務上のバランスを考えると当然のことと受け止められがちです。週5日勤務で土日出勤や残業も多く、社員が一人でも抜けるとそのしわ寄せが他の社員に降りかかってしまうような職場の中に、週3日勤務が許される社員がいたとしたら、特別に優遇されているように見えてしまいます。「なぜ、あの人だけ週3日勤務が許されるわけ?」などと、いぶかしく思う社員も出てくるはずです。
しかし、親が寝たきりで介護が必要だったり、小さい子どもがいて家事と育児に振り回されていたりするなど“仕方ない理由”があれば、「あの人は大変な事情があるのだから仕方ない」と、周囲で業務をカバーする社員たちも感情を落ちつけやすくなります。
そんな仕方なさに対して柔軟な勤務条件を特別に許可するスタンスは、オールマイティな正社員のみを長らく正統と見なしてきた職場が、働き方の柔軟性を受け入れる方向へと転換する過渡期において免罪符のような役割を果たしてきました。
一方で、“仕方ない理由”を免罪符にすることにより、柔軟な働き方を選択する人に、少なからず罪悪感のような後ろめたさを持たせてしまった面があります。
時短勤務のため、他の社員たちが忙しく働いている中で自分だけ帰宅する際に、「申し訳ないのですが、お先に失礼します」と枕詞に謝罪の一言を入れなければならない背景には、 “仕方ない理由”があるために、時短勤務という柔軟な働き方が特別に許可された待遇になっていることが影響しています。しかし、本来であれば会社と社員が合意した上で契約にもとづいて働いている訳ですから、謝罪の一言を入れる必要などないはずです。
正社員を働き方の原則とし、パート・アルバイト・嘱託など一部で例外的な雇用形態もあった時代がワークスタイル1.0だとすると、パート・アルバイトの数が大きく増え、契約社員や派遣社員など非正規と呼ばれる雇用形態のバリエーションが多様になり、正社員を主としつつも基本的な働き方が非正規と二分されるようになった時代は2.0です。
さらに、限定正社員や有期から無期雇用転換した社員が増えたり、正社員でありながら非正規社員や業務委託で副業したりしてどちらの立場でもある人が増えるなど、正社員と非正規社員が一概に分けられなくなる時代は3.0です。そうなると、基本的な働き方には幾通りものパターンが生まれることになります。今はワークスタイル2.0の課題を抱えつつも、3.0へと移り変わろうとしている過渡期です。
しかしながら、オールマイティな存在である正社員を主とする考え方が残っている間は、柔軟な働き方はあくまで副と見なされてしまう嫌いがあります。そのため、“仕方ない理由”がなければ時短勤務や長期休業などは取得しづらいままで、柔軟な働き方を希望する社員が職場の中で後ろめたさを感じてしまう状況は変わりません。
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